BL | ナノ






クローム髑髏は困惑していた。
うきうきと愉しそうに出かけていった骸の後を付いて並中にきたはいいものの、いざ扉を開けてみれば、なぜか目の前にいるのは雲雀である。
しかも、異様に疲れ切ってはいないか。
思考がまとまらずにぐるぐると考え込んでいると、不意に雲雀がクロームへと視線を向けて、口を開く。


「君、なんでここにきたの?」
「……骸様を、追いかけてきたの。昇降口から入ったのに、ここにきてた」


どうして?と、純粋に首を傾げてたずねる。
その姿に、雲雀は泣きたくなった。
そして、半ば愚痴のように事情を話し始める。


「君のとこのふざけたパイナップルと小動物がわけのわからない喧嘩を始めて、そのとばっちりさ。おかげで、ここ一週間は学校が迷路になってる」


雲雀でさえ時々迷ってしまう。
そういう時はトンファーで壁なり何なりを破壊して物理的に脱出するので一応問題はないのだが、経費的には非常によろしくないだろう。
おまけに、疲労も苛立ちも溜まる一方だ。
よって、雲雀はここ最近応接室に引きこもっている。
綱吉の最終目的地がここであるため、厳重な幻術がかかっているので元凶どもは滅多にここにはこないことも快適さを作り出す要因である。
とはいえ、応接室に全く人がこないかというと、実はそうでもない。
むしろ、今までより来訪者が増えていた。
この異常事態に対して、対処できるのは実質雲雀一人なのだ。
そのため、校内難民と化した一般生徒達が最後の望みとばかりに必死に応接室を目指す。そして、その執念からなのか、かなりの確立で辿り着くのだ。
死屍累々とでも言い表せそうな状態でやってきた生徒達を見捨てることには、さすがの雲雀も抵抗があった。
自分も忙殺寸前のため道案内はしてやれないが、そっと無言で相棒であるロールを増殖させて一匹ずつ貸し出す。
生徒達はそれを天の恵みとばかりに感激して受け取り、ようやく安心して目的地へとたどり着ける。
ちなみに、道案内を終えたロール(分身)はすぐに雲雀の元に帰ってくるため、炎関連の疲労はそこまで酷くない。
そうしてまた雲雀信者が増産されていくのだが、そこはまぁ割愛しようか。


ともかく、今現在の並中の被害は甚大だ。
もうこれが文化祭の出し物でいいんじゃね?レベルである。ただし脱出は自力で。
これほど壮大な迷路化した状況にさすがに慌てたのはリボーンならびにマフィア関係の面々だ。
このままでは幻術などといったものの存在が公になってしまう、それだけは避けねばと骸と話し合い…もとい脅しに行ってみても、
「クッフフ――!今の僕は誰にも止められませんよ!はい、もぉ一回!もぉいっかーい!わーたしは今日もこーろがりますと!少女は言う!少女は言う!さっそうさーかーみーち――ッイェア!!」
…全く話が通じない。彼は果実になってしまった。
ちなみに、綱吉にもこの話をしたのだが、返ってきた答えは
「だったら雲雀さん!雲雀さん出して!あああああ雲雀さん雲雀さんもう一週間も雲雀さんに会ってない雲雀さーん!!…子・作・り・しましょ☆」
…馬鹿が二人に増えていた。二人とも、連日のバトルのせいで脳内アドレナリンが出血大サービス状態で、ボンゴレはもう説得を諦めた。
曰く、チンパンジーの方がよっぽどまともに会話ができる。
そうして八方塞りであった状態のところに、目を付けられたのがバイパーことマーモンである。
言い値を払ってやるから、頼むからあの惨状を隠蔽してくれ。後生だから。
珍しく低姿勢な依頼に二つ返事で引き受けたのだが、マーモンでさえも、その現状を直に見たときには帰りたくなった。そう、なんというか、カオス。



「骸―――!!いい加減にしないと丸焼きだからね!!?」
「クハハ――!!やれるものならやってみなさい!!」

「うわーん!またトイレに帰ってきた!もうトイレから出たいよ――!!」
「教室に入らせてくれぇ――!!朝から学校にいるのに、俺このままじゃ欠席だよ!!」
「風紀委員長――!!」
「応接室を目指せ!メシア様がいらっしゃるぞ!!」
「くっさ!理科室くっさ!!」
「おうふ!校長室入ったら校長の浮気がばれての修羅場だったぜ!!」
「ほ、保健室…保健室はどこですか…うぇっぷ」




やってきたマーモンは早々に応接室に避難した。それはもう全力で。
クローム、雲雀と共に安全地帯で遠い目をしている。
ああ、僕はこれからこのカオス空間を何とかしなければならないのか…。
そんな哀愁漂う背中に、雲雀とクロームは揃って合掌した。


「「ご愁傷様」」

「僕はすでに疲れたよパトラッシュぅ…」









prev / next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -