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「雲雀さ――ん!!!今日もカッコいいですね、大好きです!」

一時間目と二時間目の間の休み時間。
突撃☆隣の応接室とでも言わんばかりにスパーン!といっそ清清しいほどの音を立てて応接室の扉が開け放された。
廊下にいるのは、校内でも何かと噂になっている女子生徒の姿があった。
まぁ、噂といっても主に悪い方面なのだが。
毎日恒例となっているこの状況に、部屋の主である雲雀は完無視を決め込んで書類整理に没頭していた。
それでもその女子生徒、沢田綱吉はめげない諦めない。
書類整理の邪魔にならないところまで駆け寄って、雲雀の顔を見つめて一人できゃーきゃー騒いでいる。


「もう、雲雀さんかっこよすぎです!!」
「真剣な顔も素敵!」
「ああ、その綺麗な手に触れられたい…!」


とにかくひたすら甘い言葉ばかりを吐きまくる。しかも、それは全て本心であるからやっかいだ。邪魔だと殴っても、やたらと打たれ強い彼女は意にも介さない。全くもってやっかいだ。追い出しても追い出しても次の休み時間にはけろっとしてやってくるのだから、それすなわち労力の無駄遣いである。そういうわけで、もう雲雀は追い出すことを諦めた。愛の言葉とやらを吐きまくるだけで自分の邪魔はしてこないため、まぁ無害だからいいかと放置している。授業が始まる前には、駄犬と野球馬鹿が回収にくるのだから、と自分を慰めるほどにまで疲れていることに、幸か不幸か、雲雀はまだ気付いていなかった。



「雲雀さん雲雀さん、一緒のお墓に入りましょうね!」
なんで結婚前提なの。
というか、もう死後の話?早いよ。

「雲雀さんのウェディングドレス姿を見せて下さい!わたしの隣で!」
あ、結婚前に戻った?
なんで僕?そういうのは君でしょ、君。
なんで女装なの、百合ップルにでもなるつもりか。

「子供はまだ早い(きゃっ!)から、暫定的にリボーンやランボで子育て練習しましょう!」
違うから。赤ん坊は確かに赤ん坊の姿だけど…って、ええい!ややこしい!
赤ん坊は確かに赤子の姿だけど、あれもういい年らしいから!
それから、君んとこの牛の子は僕に怯えてるだろう。



だれか突っ込みを一ダースほど買って来い。
ここは盛大な突っ込み不足だ。

授業開始一分前に、駄犬と野球馬鹿に無言で引きずられて帰っていった綱吉を見て、また大きく溜息をつく。
自分を敵視していたはずの駄犬からの憐憫と同情の視線に泣きたくなった。
また次の休み時間もくるんだろうなぁ、と想像して、雲雀は初めて時間の流れというものを恨みたくなったのだった。




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