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「おい!聞いたか!?」
「ああ、あの赤司征十郎が来てんだろ!?」
「それって、あのキセキの世代のっ?」
「マジだって!しかも、今から風紀委員長と1on1するらしいぜ!!」
「嘘だろ!?…うわー見にいけないじゃん」
「それが、今回は委員長直々のお許しが出たらしいぜ!しっかり見て技術を盗めって!今日は群れてても咬み殺されねーよ!!」



体育館は、上へ下への大騒ぎであった。
あのキセキの世代のキャプテンのプレイが見れる。
それだけで、少しでもバスケの知識があるものは皆やってきてしまったのだ。
練習試合並の観客で埋まったコートで、綱吉達はまさにどうしてこうなった的心情で渦中の二人を眺めていた。
大事になってきた辺りで退散しようと思っていたのだが、赤司が
「バスケの練習してたんだろう?だったら見ていけばいい、これが天才のプレイだ」
と言って彼らを留まらせたのだ。
一見すると傲慢不遜にしか聞こえないが、彼はそれだけの資質を持ったまさに天才であるため、誰も否定できない。
対する雲雀でさえ、何も言わないのだから。

動きにくいからなのか、雲雀は羽織っていた学ランを脱いで端に置き、胸元のボタンをいくつか外す。
赤司もブレザーを脱ぎ、ネクタイを外して同じようにボタンを外した。
腕まくりをして、互いに向かい合う。
交じり合った視線が、開始の合図だ。
先攻は、赤司だった。
素早いドリブルで雲雀を抜こうとするが、彼とて簡単には抜かせない。
瞬時に反応してそれを阻むが、それは赤司の予想の範囲内。
隙間を掻い潜ってゴールに向かい、レイアップでゴールを決めようとした。
が、その動きにすら雲雀は付いていく。
コンマ一秒ほどの差で同じように飛んでカットをしようとする。
それは阻まれたように見えた。
雲雀の手がボールに触れようとした、瞬間。
赤司はボールを後ろへと落とす。気付いた雲雀が焦るが、既に遅い。
後ろに回されていたもう片方の手にボールは落ち、ゴールは静かに決まった。


「…はぁ、また負けたか」
「そう残念そうな顔をするな、今回は俺も焦ったぞ?まさか、あれに追いついてこられるとは思っていなかった…」
「その言葉、そっくりそのまま返すよ。まさか、あの状態から反対の手で打たれるとは予想もしていなかった」
「黄瀬じゃないが、青峰の模倣さ。型に嵌っていては、いずれお前には勝てなくなるだろうからな」
「…一応、ありがとうと言っておこうか」


しんとした体育館に、二人の会話はやけに大きく響いていた。
1on1が始まってから、誰一人として口を開いたものはいない。
瞬間の出来事に近かったというのに、数時間の出来事にすら思えていた。
これが天才のプレーか、と、経験ある者たちは戦慄していた。
素早さも、動きのキレも、全てが自分達の届かない領域にあると、本能で理解する。
それと同時に、かの天才と対等に渡り合った雲雀にも畏怖の念を覚える。
彼が特別だということはわかっていた。それでも――…




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