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結局、二人の脳内対局は赤司の勝利で終局を迎えた。
とはいえ、応接室での再戦での勝者は雲雀だったのだが。
これで二人とも通算54勝54敗目である。
つまり、二人は全くの互角…今までだって、一度も本当の意味で勝敗がついていない。
それが楽しくて勝負を続けているわけなのだが…とにもかくも、二人は似たもの同士、好敵手と書いてともとでも呼ぶべき関係を保っていたのだった。
一部のお姉さま方が発狂しそうな仲睦まじさだということもついでに記しておこう。


「…終わった、」
「お疲れ」
「ああ…じゃあ、行こうか」
「え?」
「部活の出来ない日にわざわざここまで来たんだ…どうせ、僕に相手しろってことだろう?」
「…相変わらず、勘が鋭いな」


赤司がわざわざここまで来た理由。
それは、雲雀とバスケをするため。
なんだかんだで仲良くなり、天才と呼ばれた赤司のプレーに付き合っていくうちに、雲雀は彼に対抗できるだけの能力を身に付けていた。
元々の運動神経が素晴らしくハイスペックであることが主な理由であるだろうが、そもそもの性分が戦闘向きであるため危険なプレーも多い。
相手の負傷が前提となるほどのそれは試合向きでないのが欠点であるが、赤司が天帝の眼を使わなければいい勝負になるだろう。
最も、戦闘に特化した雲雀のプレイを相手にすると、眼を使うより感覚勝負になってしまうのだが。

そうして二人は放課後に体育館にやってきたのだが、そこにはバスケ部以外の先客がいた。
バスケ部を言いくるめてスペースを借りるのは簡単だ。
こちらには雲雀がいるし、何より、赤司はあのキセキの世代の一員…しかもキャプテンだ。
そんな人間のプレイが見れると言えば、喜んで貸してくれるだろう。
そう当たりをつけてきたのだが、まさかボンゴレの面々がいるとはさすがの雲雀も予想していなかった。


「へ…?あれ、雲雀さん!?」
「雲雀、テメー何しにきやがった!」
「よー雲雀」
「チャオっす」

「……」
「…ずいぶん愉快な面々だな、知り合いか?」
「いや、全くの他人だ」
「(知り合い全否定されちゃった!?)」


このときの雲雀の胸中としては、え?何でいるのこれなにフラグ?である。
まさか体育館にいるとは思っていなかった。
そして、なぜ当然のようにバスケをしている…そこまで考えて、猛烈に帰りたくなったのは仕方ないといえるだろう。
バスケ部のわけがない彼らが何故ここにいるのか、その理由は聞いてもいないのにあちらから説明してくれた。


「今日の体育はバスケだったんだがな、ツナは相変わらずのダメツナで失敗ばかりしまくっていたからここで練習してんだ」
「十代目!俺が説明したとおりにやってみて下さい!」
「ツナ!こう、ぎゅってしてぱってやるんだぜ!」
「いやいや全くわかんないよ!!」
「ツナ、気合だ」
「一番わかんない!!…と、いうか、雲雀さんはどうしてここに?その、後ろの人は…」


恐る恐る、といった感じで綱吉が雲雀に尋ねる。
ふるふると震えた綱吉の瞳と、赤司の赤い瞳がぶつかった。
説明を完全に放置した雲雀の代わりに、外面だけはいい赤司が答える。


「俺たちもバスケしにきたんだ、悪いが、場所を空けてくれないか」
「え…雲雀さんが、バスケ?」
「んだテメー!今は十代目がお使いになってんのがわかんねーのか!」


にこりと微笑んだ赤司と、彼の言葉に突っ込まずにはいられなくとも言い知れない迫力に押し負けて場所を譲ろうとする綱吉。
だが、忠犬こと獄寺がそれを見過ごすはずがなかった。
悠然と構える彼にそう叫んで掴みかかろうとする。
だが、
「っ、な…!?」
「ご、獄寺君っ!」
彼の手が触れる前に、赤司に転ばされてしまう。
「テメェ…何しやがった!!」
「いきなり殴りかかってくるような相手に、答える義理はないな」
「この野郎…!」
「獄寺君!落ち着いて!!」
吼える獄寺と、彼を必死に諌める綱吉。
それを無感情に見つめていた雲雀が、ふと口を開いた。
「…アンクルブレイク、」
「え?」
「今の技の名前だよ。といっても、バスケの、だけど」
クスクスと笑って、そこに転がっていたバスケットボールを手に取った。
軽くドリブルをすると、それを赤司の方にパスして、不敵に微笑んだ。


「さぁ、やろうか」




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