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貴方の行為が罪だというのなら、
俺が代わりに背負えたなら、どんなによかったでしょう


貴方を看取って数年後、俺はとあるファミリーと抗争中に、子供を庇って死んでしまった。
それ自体はまぁいい。いや、よくないが、何も出来ずに無駄死にするよりは、遙かにましだったと思う。結局子供も作らずに死んでしまったし、それでなくても、あの人のおかげでボンゴレは壊滅状態に陥ってしまっていたのだから、俺の死後にはきっと壊滅したのだと思う。

あの事件の後、貴方はボンゴレで、いや、世界中で大罪人扱いでした。
たった一人で世界中のアンダーグラウンドを滅茶苦茶にして、多数のマフィアを滅ぼして、表の経済事情にまで影響が出てしまったのですから、当然といえば当然なのだけれど。
でも、一番酷かったのはボンゴレだった。ここまで盛大な幹部の裏切りは史上初だったらしい。…何度も言うが、雲雀さんは決してボンゴレの守護者になることを認めていない。ボンゴレが勝手に仕立てあげただけだ。それで裏切りだのどうのって、ちょっと滑稽すぎる。
ファミリーを裏切り、ボスに歯向かった反逆者。
アルコバレーノに刃を向け、世界情勢を狂わせた大罪人。
どれもこれも、あの人には相応しくない呼び名ばかり。
それと同時に、最強の人。
ああ、雲雀さん。貴方があれほどまでに望んでいたその称号は、これほどの汚名にまみれてもなお、色褪せることなく存在している。
俺は、どの呼び名に対しても、弁明も何もしなかった。ただ、最強であったことだけを肯定する。
驚いたのは、それに骸が賛同の意を示したことだった。


なぜか転生して、再び生を受けた今。
不思議なことに持ち越してしまった超直感いわく、雲雀さんも転生しているみたいだけれど、会いにいこうとは思わない。記憶を持っているかは定かではないし、そもそも、会ってもどうしたらいいかわからない。
だから、これでいいのだと。
溢れる懐古の念を押し留めて走り出せば、角を曲がった先の男の存在に気付いて、思わず足を止めてしまった。
第一印象は、真っ黒。
黒い髪に黒い服。ああ、まるであの人みたいだなぁと思わず見つめてしまっていれば、学校の校舎を見つめていたその人が、俺の方に振り返った。
あ。と、知らず声が滑り落ちる。
仕方のないことだ、だってあれは――









「やぁ、沢田綱吉」


彼と出会った頃を思い出させる容姿の、その人が。
以前と変わらない不敵な笑みを浮かべて、空白の時間などなかったように、もう何年も呼ばれていなかった己を名を呼んだ。
知らず頬を伝う涙の意味は、きっとあの日と真逆なのだろう。
彼の名が、唇から零れた。
それを聞いて笑うあの人が、記憶の中の彼と重なった。

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