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雲雀さんは死んだ。
俺の目の前で、いつも見つめ続けていたしなやかな身体が地面に崩れ落ちる。
聞きなれた銃声の音が、やけに大きく響いていた。
とっさに腕を伸ばして、地面に付く前に抱え込んだけれど、もうその漆黒の瞳が開くことは、決してない。
最強の称号に満足して、あっさりと逝ってしまった。


「ひばり、さん…」


本当に、儚い、人だった。
だけど、その生き様は本当に鮮烈で、あまりに美しくて。
知らず涙が零れ落ちる。
リボーンの声と、獄寺君の声が聞こえたけど、意識的にシャットアウトした。
邪魔をしないで。
柔らかく、でも寂しそうに微笑んだこの人の顔を、見ないで。
初めて触れた、雲雀さんの身体は、思っていたよりとても温かくて。
流れる赤い血が、一瞬を駆け抜けるようであったこの人が、確かに生きていたという証を伝えてくれていて。
ああ、この人も俺と同じ人間だったんだな、って、今さらながらに、思った。



雲雀さんの骨は、彼が愛した並盛に埋葬することにした。
そう言ったら、どうして大罪人にそこまでするのだと大勢に問い詰められたけど、やんわりと笑って黙らせた。
雲雀さんの遺骨と、ヒバードの遺骨(抗争の最中に死んでしまったらしい)と、彼の好んだ黒の着流しや和菓子、日本酒などを数点だけ持って、ボンゴレから抜け出す。
ボンゴレボスとしてじゃなく、沢田綱吉として、埋葬したかったのだ。
貴方に憧れていた、一人の人間として。
草壁さんに聞いた、生前の彼のお気に入りの場所。
並盛の全てが見渡せる高い丘の上に、丁寧に埋葬した。
その後、並盛で一番高いビルに登る。そのころには、既に陽は傾きかけていた。
無断で屋上にまで登って、先ほど埋葬せずに少しだけ残しておいた遺灰を、美しい和紙に乗せて、高く掲げた。
突風が、遺灰を攫う。
風に乗せられて、そのまま空中に流されていってしまった。


これで、いい。
遺骨は彼のお気に入りの丘へ。
だけど、一所に留まることの少なかった彼のこと。
きっと退屈してしまうだろうと、少しの遺灰を並盛全体にばら撒いた。
彼が、自由にいられるように。
死してなお、並盛を守れるように。
夕日に照らされて、赤く色付いた涙を、風が拭い去ったような、そんな気がした。

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