short | ナノ


何がどうと言うわけでもない。
ただ、ここで一つの恋が終わっただけ。
暗い部屋にいるのは私と彼。
どこかのドラマの様に、浮気を問い詰めているだけなのだ。
証拠写真を無造作に放り投げて薄く笑った。


「これでも、まだ貴方はしらばっくれるのかしら」
「これは…っ、」
「綺麗な人ね、スタイルもよくて、色気もあるわ」
「玲…」
「いいところのお嬢さんらしいわね、どう、楽しかった?私と違って、素直で可愛らしかったんでしょうね」
「悪い…」
「もう抱いたの?お嬢さんを抱くのに、安っぽいホテルなんて使ってないでしょうね」
「玲っ…」
「気安く触らないで」

私に触れようとした彼の手を払いのける。
あぁ、本当に。
なんて言えばいいのか、この、全てを壊したくなる感情は。
土方さんの綺麗な顔を見つめる。
噛みしめられた唇を見つめて、自嘲気味に笑った。
私に愛してると囁いたこの唇で、彼は他の女にも同じことを言ったのだろう。
私を惑わせたその手で、他の女にも触れたんだろう。
あぁ、なんて、憎らしい。
愛憎とは素晴らしい言葉だ、私の感情は、今まさにこの二つに支配されている。
土方さんと女が抱き合っている写真をぐしゃりと握り潰して、私は彼に向き直った。

「……別れましょうか」
「待ってくれ…っ俺が悪かった…だから」
「付き合う時、私が何て言ったか覚えていないの?」
「………浮気、したらすぐに別れる…」

そう、私は土方さんに告白された時、了承の返事と共にそう言っていた。
浮気をしたらすぐに別れる、と。
するならバレないようにして、とそう言った。


「だけど、貴方は、浮気した。そして、私に、バレた」
「………」
「終わりよ、言い訳なんて聞きたくないわ」
「玲…俺は、まだ愛してるっ……もう、二度としねぇ。約束する…」


いつもの彼からは考えられないような弱々しい声音。
まるで、捨てないでくれと言っているようだった。
けど、私の気持ちは変わらない。


「私より、彼女を選んだんでしょう?先に、私を捨てたのは貴方よ」
「俺が好きなのは玲、お前だ」
「信じられないわ、もう、ね。貴方によそ見をさせてしまったのは私の責任よ。私の魅力が足りなかった、だから貴方は浮気した…それだけの、ことよ」






prev next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -