short | ナノ
「あれ、どうしたの?」

理由なんてわかりきってるけれど、わざとそんなことを聞く。
真っ赤になって固まっていた一君が、はっと我に返ったように僕に掴みかかる勢いで叫ぶ。

「あ、あんたはどういうつもりだ…!学校で、教師と生徒で、一体何を…」
「何って、キス?どういうつもりって言われても…付き合ってるから?」

パニくっている一君に、あっさりと事実を暴露する。
というか、皆気付いてないんだね…気まずそうに視線逸らしたりしてるけど、どっちかというと、立場弱いのは僕なんだけど。
まぁ、それを悟らせないのが僕が身に付けた技術なんだけどさ。
もともと、こういうのは得意だったし。

「あんたはわかっているのか!こんなのがバレたら…」
「そう言いつつ、覗いてたのは誰さ」
「あ、あれは…っ」

ああ、一君たら、らしくないなぁ…。
もう君たちにバレてるって気付いてないんだね。
好都合だけど。

「そ、総司…いつの間に、あんな美人の恋人捕まえたんだよ!」

…新八さん、論外。
そこ聞くんだね、いいんだ、教師と生徒ってとこは。

「さぁね〜。でも、どっちかと言うと、僕が捕まった感じ」
「くっそう!なんでそんな簡単にいい女捕まえられるんだよ!いいよな、顔のいい男はよぉ!!」
「…人の話聞いてた?」

もういいや、無視しよう。
大体、玲さん捕まえるのって簡単じゃないんだよ?
あんないい女の人なんだから、経験豊富だし…厭きられないようにするのが必死だし。
とりあえず僕は、玲さんの好みの性格らしいから嬉しいけど。

「お、沖田先輩…」
「ん?なぁに、千鶴ちゃん」

あーあ、耳まで真っ赤。
ちょっと刺激が強すぎたのかな、シスコンのお兄さんのせいで、恋愛経験少なそうだし。

「わ、私…誰にも言いませんから!あの、ちょっと気になっただけで…その、先輩が選んだ人ってどんな人かなって…の、覗いたりしてごめんなさい…」

それだけ言って、俯いてしまった。
あー…なんか罪悪感。悪いのはこっちなのに。
でも、ごめんね千鶴ちゃん。僕は君より玲さんが大事なんだよね。

「そう…?それは助かるな。誰かに言うって言われたらどうしようかなって考えてたんだ…」

千鶴ちゃんの顔を覗き込むようにして囁く。
優しく甘く、侵食するように。
口元を歪ませて形だけ笑みを作る。
その残酷ともとれる笑みを見て、小さく息を呑んだ千鶴ちゃんは、はい…と呟いた。
よし、いい子だ。

「ちょ、総司!」
「なに、平助」
「千鶴から離れろって!」
「はいはい…」

平助が犬みたいに僕に乗りかかって千鶴ちゃんから引き離そうとする。
心配しなくても、何もしないのに…。
とりあえず、約束してもらわなきゃな。


「まぁ、そういうことだからさ…」

そこまで言って、一旦区切る。
隅で落ち込んでいる新八さんはほっといて、またにっこりと笑いかけた。
なるべく艶やかに微笑んで、甘ったるい声を出して。
同姓にも通じる色気の出し方、として教えられた通りに言葉を紡ぐ。

「共犯者に、なってくれない?」

左之さんは、面白そうに笑って。
一君は、また真っ赤になって固まって。
平助は、女みたいに慌てて。
千鶴ちゃんは、真っ赤になって俯いて。

皆、頷いてくれた。




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