short | ナノ
僕が玲さんと付き合ってから大体一ヶ月が過ぎた。
あれから僕たちは、放課後ほとんど毎日のように会っている。
部活が終わると急いで着替えて、数学準備室に走っていく。中に入ると、汗だくになった身体をクーラーが一気に冷やしていく。
汗が、暑かったはずの身体の体温を奪っていった。その感覚が酷く心地いい。
奥の椅子に座って、プリントの採点をしている玲さんに近づいて、後ろからがばっと抱きついた。

「玲さんっ!」
「きゃっ…」

可愛らしい悲鳴を上げる玲さん。プリントにぐちゃぐちゃになった赤線が引かれていたが、そのプリントは平助のだったので無視しておく。
それより、玲さんだ。

「会いたかったよ玲さん!」
「もう…今日は二回も授業があったでしょ、それより、抱きつくなら採点時以外にしてくれないかしら」
「授業中に会ったのは玲先生だもん、僕が会いたかったのは、僕の恋人の玲さん」

そんな屁理屈を述べながら、柔らかな玲さんの髪に頬を摺り寄せる。甘いローズの香りのする黒髪は綺麗に手入れが行き届いていて、蛍光灯に反射してきらきらと光っていた。
腰に手を回して、細いくびれの辺りに腕を巻きつける。もう片手で玲さんの持っている赤ペンを奪ってそのまま手と手を絡めた。耳元に唇を寄せて精一杯甘く囁く。

「玲サン…?ほっとかれたら、僕拗ねちゃうよ?」

玲さんと付き合ってから、身に付けた技術。甘い声の出し方も、色気のある仕草も、駆け引きの会話も、ベッドの中の振る舞い方も。全部教えてもらった。もちろん、まだ全然身についてはいないけど。いつかは玲さんを翻弄できたらなぁ…なんて。
そんなことを思いながら、玲さんを誘惑してみる。

「ふふ…それは困るわね」
「でしょ?だから、構って、オネーサン」

軽く耳を甘噛みして、吐息混じりに囁く。腰に回した手でくびれをなぞって、服の中に手を入れて、握った手をさらに強く握る。
こちらを見上げた玲さんを、情欲に濡れた瞳を隠さずに見つめ返す。
それが合図だったかのように、僕は自然に唇を寄せた。
そっと唇を合わせて、誘うようにあけられた玲さんの口内に舌を入れて、わざと音を立てるように絡めていく。
この一ヶ月で、キスは随分と上達したと思う。
玲さん仕込みだから、自分で言うのもなんだけど、かなりいやらしく色めかしい。
その先の行為を想定されたキスだ。
玲さんの手が背中と後頭部に回る。はだけた胸元に、どちらのものともつかない唾液が伝う。
夕日が窓から差し込んで、僕らの影を伸ばした、その時。
隣の古典準備室から、ありえない音が聞こえてきた。



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