short | ナノ
「先生…キスして、いい?」

聞いておきながら、答えを聞かずに唇を塞ぐ。
初めてのキスだった。
あーあ、もう高校生なのに。
自分で言うのもなんだけど、けっこうモテるくせに、ファーストキスだなんて笑えるよ。
下手くそって笑われたら落ち込むかも。
……そしたら、教えてって言えばいいか。
無我夢中で舌を絡めて、映画とかの見よう見まねで動かした。
しばらくそうしていると、不意に先生の手が背中に回される。
もう片手で頭を引き寄せられて、先生からも舌を動かした。
大人の女だなぁ、って思ってた玲先生は、やっぱりキスも上手くって、最後は僕が翻弄されてしまった。
あーあ、カッコ悪…。

そっと唇を離す。
二人の間に伝った銀色の糸は、数秒も保たないままに切れてしまった。
目が合うと、先生は薄く笑う。
初めて見る先生の女の表情に、ゾクッとした。


「キスは、初めて?沖田君、」

(この問題、わかる?沖田君、)
普段、授業中に聞くのと全く同じトーンで、囁かれた。
慣れているのか、戸惑った様子は微塵もない。
その声に誘われるように、僕は、うん…下手だった?と尋ねる。

「とても上手、とは言えないけど、初めてなら満点よ」

僕の唇を人差し指でなぞって、彼女は艶やかに笑った。
先生、とは、もう呼べなかった。

「私と、どうなりたいの?」
「付き合いたい、」
「それから?」
「キスしたいし、デートしたい」
「それだけなの?」
「……出来ることなら、セックスしたい」

素直にそう答えると、彼女はまた笑って。
合格よ、と呟いた。
そして。

「いいわ、付き合ってあげる」

そう言って、僕に触れるだけのキスをした。
一瞬、意味がわからなかったが、理解すると胸に熱いものが込み上げてきた。

「本当、に…?」
「もちろんよ、私ね、自分の欲に正直な男が好きなの。だから、好きよ、沖田君」
「玲、先生…」
「あ、それ、駄目。なんだか犯罪クサイから、名前で呼んでね」
「じゃあ、玲サン…」
「ふふ、なぁに?沖田君」

夢見てるみたいだ。
理由はどうあれ、玲先生…玲さんが付き合ってくれるんだから。
憧れて大好きだった先生は、本当に大人の女だった。
きっとこれからも彼女に翻弄されるんだろうけど…それでも構わない。
子供な僕は、それすらも嬉しいのだから。

とりあえず、玲さんの好み通り、自分の欲に従って、彼女にもう一度キスをした。



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