short | ナノ
玲先生から漂う仄かな香水の香りにくらくらしながらも、なるべくゆっくり問題を解いていく。
同じ香水でも、クラスの女の子とは全然違うんだな…。
甘ったるい香水を振り掛けてるだけの女の子達とは違う、服装にあった透き通った甘さの香りだ。
甘いけど、甘ったるくない。
心地よくて、甘えたくなる…抱きついてみたくなる…そんな、香り。
シャーペンをプリントに走らせながら、すぐ傍にある玲先生の顔をチラリと仰ぎ見た。
小顔で、目が大きくて、鼻筋がすっと整っていて…凄く綺麗だった。新任の先生だから、僕達とも年齢はそんなに離れていない。でも、可愛いって表現より綺麗が似合っていた。薄く引かれた口紅が色っぽくてドキドキする。あぁ、駄目だ。やっぱり補習なんかするんじゃなかった…。



「……沖田君?」

玲先生の、少し戸惑ったような声が聞こえてくる。
当然だよね、僕が抱きしめてるんだから。
先生の無意識の誘惑に耐えきれなくなった僕は、思わず立ち上がって玲先生を抱きしめてしまったんだ。
トクン、トクンと少し早い規則的な鼓動が伝わってきた。
不思議と安心する音色だった。

「沖田君…どうしたの?離してくれないかしら…」

玲先生は、力なくもがいて僕の腕から逃れようとする。
そんな抵抗も、全部奪うようにきつく抱きしめて、どうせここまできたなら…と、今まで胸中に押さえ込んできた想いを吐き出す。

「…好きだよ、玲先生」

先生の細い肩が、ビクリと揺れる。ごめんね、先生。でもね、好きなんだ。その、小さく微笑む笑顔が好き。困ったような表情で笑うのも好き。実は、怒ると物凄く怖いのも…怖いけど、好き。生徒思いなとこも、たまに抜けてるとこも、全部全部好き。大人な玲先生には、子供の戯言としか、受け取って貰えないかもしれないけど…。
でも、少しは期待してもいい?

「駄目よ、沖田君…私達は、教師と生徒なんだから…」

そう言いながらも、抵抗らしい抵抗をしない玲先生。
力なく僕の胸元に添えられていた手は、いつの間にかはだけ気味のシャツを握っていた。
狡いね、先生。
そんなこと言いながら、僕を拒絶しないなんてさ。


「好き…先生、愛してる」
「そういうことは、本当に好きな人に言いなさい…」
「わかった…玲先生、愛してる」

抵抗は、いつの間にか消えていた。
先生の柔らかな髪に頬を擦り寄せ、必死に好きだと繰り返す。
お願い、信じて。
冗談でこんなこと言わない、わざわざ危険を冒したりしないから、だから。



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