short | ナノ


聞いていますか、聞こえていますか。私の声が届きますか。全ての痛みに、自分の傷にさえ、口をつぐんで耳を閉じて、独りで背負ってどこへ行く。隣に誰の姿もなく、貴方は悲しい暗闇に溺れにいくのか。嘘が上手いのは知っていたし、今さら謝罪が聞きたいわけでもない。ただ、最後まで貴方の傍にありたいだけだ。貴方のその不器用な、小さな優しさで自分を傷つけたりしないよう、傍で支えていてあげたいだけだ。開いた歳の差は埋められないし、今さら出逢う前にも戻れないけれど、それでも貴方を愛している。滅多に浮かべないその笑みの先にある感情を、痛みを、私はほんの少しだけだがわかっている。貴方が私を愛してくれていたと、きちんとわかって言っているのだ。死なば諸共、貴方が望むなら地獄まで。どこまでだって付き合おう。とうにその覚悟は決めている。笑顔で全てを隠さないで、しまい込んだ声を聞かせてくれよ。その先に見える破滅など、ただのまやかしにしてしまおう。知らなかっただろうけれど、貴方はいつでも赦されていたのだ。さぁ私の手をとって、私を攫っていってくれ。欲しいのは別れの言葉じゃない。私を縛るその言葉だ。貴方と来いと、そう言えばいいのに。ねぇそうでしょう?手放したくはないと怒るくせに、失いたくはないと泣く貴方が酷く愛おしいのだ。言えばいいのに。さぁ言ってよその誓いの言葉を。私はそれにこう答えよう。聞いていますか聞こえてますか。







世界一残酷な人間よ、聞いているか
(「貴方を一生愛している」)







prev next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -