short | ナノ



何もかもなくしてそこに残るものが愛だと言ったのは誰だったろうか。それをさも美しいもののように言うけれど、全てが滑り落ちてもなお残るくらいのものがお綺麗なはずがない。本当に綺麗なら、まっさきに落ちるべきだ。少なくとも、自分に残ったこの感情とやらは決して綺麗でもなんでもない。酷く汚くて酷く薄汚れていて、どろどろと絡みつくような、そんなものだ。情も執着も嫉妬も独占欲も支配欲も何もかもをごちゃ混ぜにしてほんの少しの××でそれを隠しただけ。狂気染みていると、自分でも思う。依存しているとも。だけど、それを自覚してはいても全く気にならないということ自体が本当に自分が欠けているが故の考え方なのだろう。否、自分は壊れているのだったか。血に狂った異常者だ。けれど、それがどうした。真っ赤に染まった世界に一人佇むのが好きだ。咽返るような甘ったるい血の香りが、吐きそうなほどに好きだ。返り血に塗れて真っ赤に染まるのが好きだ。ねっとりとしたその血を思う存分に飲んでみたいと思うほどに好きだ。これは、見ず知らずの他人の血なんて気持ち悪くてまだ試したことがないけれど。ああ、こんな思考回路の人間は自分以外に存在するのだろうか。まぁ、いてもいなくてもどうでもいいのだけれど。とりあえず、出逢いたくはないなあとだけは思う。自分の知らないところで勝手に生きて勝手に死んで欲しい。自分は殺戮と彼女に忙しいのだ。自分に似た血狂いなど、面倒くさいことこの上ない。さぁ、帰ろうか。もう血は十分堪能したから、次は彼女だ。帰ろう。彼女の待つ家へ。真っ白の薔薇を血で赤く染めてサプライズ。今日はどんな顔をするのかな。





マリア
(血狂い気狂い君狂い)



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