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「賭けをしようか、玲」


見事な純和風の屋敷の中。とびきり美しく造られたその部屋は、中に閉じ込められた女を雁字搦めに縛りつける鳥籠のようなもの。
敷かれた布団の上で、情事の後もそのままに寝転がる玲の隣に座った雲雀は、そう言ってにこりと微笑んだ。
好き勝手に玲のしなやかな肢体を弄んだ際に、身体中に刻み込んだ赤い所有印をなぞって、また満足気に笑う。
この美しい鳥籠に玲を閉じ込めてから、雲雀はよく笑うようになった。
それも、以前の彼からは考えられない、無邪気な笑みを。
彼が狂っているのだと気付いたその時には、もう既に何もかもが遅かった。
雲雀は、玲を愛している。
愛しすぎて、いつの間にか狂ってしまっていた。
こんなことになる前、恋人ではなかったとはいえ、玲とて雲雀を好いていたのだ。
恋に変わる寸前の、恋愛未満な感情。
雲雀が狂わなければ、きっと近い未来に付き合っていたはずだった。
けれど雲雀は狂った。欠片も愛を知らずに、与えられずに育った彼には、玲が自分を愛して応えてくれるという前提そのものがなかったのだ。
それに、誰も気付けなかった。だから止められなかった。
玲は恐怖で逃げようとしたが、もちろん雲雀がそんなことを許すはずもなく…鎖で繋がれ枷を嵌められて、彼の好きに愛でられている。
玲のためにあつらえられたこの部屋で、いつものように激しく抱かれた後、雲雀は賭けをもちかけた。


「か、け…?」
「そう、賭け。もし、君が勝ったら、ここから出してあげる」


その言葉に、玲は目を見開いて雲雀を見つめた。
久しぶりの玲からの視線に気をよくして、ぐったりと横渡ったその身体を抱き上げる。
傍に置いてあった高級の着物を羽織らせて、話を続けた。


「簡単なことだよ…今日から一ヶ月の間に、君が妊娠するか、しないか」
「っ…!」
「しなかったら出してあげるね。でも、もし、孕んでたら…僕のものになって」


逃げようとしないで。
キスを拒まないで。
君も僕を抱きしめてよ。
名前で呼んで。
好きって言って。
愛してるって言って。
僕を求めて。


「別にしなくてもいいよ。それでも離さないし、中に出すの止めたりしないから、いずれ出来ちゃうと思うけどね…」


どうする?
そう言って笑った顔は、とてもとても綺麗だった。




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