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「またか…」


度重なる報告書に頭が痛くなる。
今月に入って五度目の、雲雀さんによる理不尽なファミリー壊滅事件の報告書だ。
獄寺君からの報告書には、建前上理由不明と書かれているけど、本当はわかってる。
玲さんだ。
雲雀さんの、唯一無二の恋人。
真っ赤なルージュとドレスの良く似合うこの上なく美しい女性だ。
玲さんは、その容姿の美しさからボンゴレ内でもクロームと一、二を争ってモテている。
(どうでもいいが、雲雀さんは骸と一、二を争ってモテている)
つくづく、雲霧組は恐ろしいと思った。
強い、美しい、行動が読めない、恐ろしい、策士だ、…挙げていけばきりがない。
そして、目下の悩みであるところのかの最強の雲の行動理由。
ことごとく雲雀さんに潰されているファミリーには共通点があって、それが、ファミリーの誰かが玲さんに言い寄った、というものである。
一応、悪徳マフィアしか壊滅させていないのは雲雀さんの配慮であるかもしれないが、そんなことは絶対になく、きっと後々めんどくさいからだろう。
玲さんとの時間を潰されたくないのだ、彼は。
その証拠に、その他のファミリーは壊滅させはしないものの、雲雀さん視点でけっこうな炎の量を注入しなければ開かない匣(つまり普通の人では絶対開匣不可能)を送りつけるという地味に嫌な嫌がらせから、取引相手を横取りしたり相手自体を買収したりと盛大な嫌がらせをしている。
どんだけ暇なんだ、あの人。
そんなことを考えていると、不意に扉をノックする音が聞こえた。


「十代目、ちょっといいですか?」
「獄寺君?いいよ、」
「これなんですけど…」


青い顔をした獄寺君の表情に、いらない超直感がガンガンと鳴り響いた。
意を決して報告書を受け取る。
そうして内容を読んで、また絶望した。
俺の仕事は、どうやらまだ終わらないらしい。
雲雀さんのと全く同じ内容の玲さんの報告書に、もうこの二人は世界中に二人きりでいるのが一番幸せなんだろうなぁと思う。
もういっそ、二人で無人島にでも行ってしまえばいい。
けど、そうしたってきっと自分達以外の人間の気配は消えないのだろうから、最後には二人で毒薬でも乾杯するんだろうなぁ、と、人事のように心配した。







カンタレラを飲み干せ!
(激情と愛情とほんの少しの嫉妬で割ってさぁ乾杯!)



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