short | ナノ


「えっと…要するに?ここ最近忙しかったのは仕事じゃなくて、私に渡す婚約指輪を作ってもらってたってこと?」
「そういうこと…まさか浮気を疑われるなんて思ってなかったよ。紛らわしいことして、悪かったね」
「あ、いや…」
「ほらほら雲雀様、もうこの際プロポーズしてもうたらどうです?」
「うるさい…!そもそも、君にも原因の一端がっ…」
「黙って女と会うてたんは、雲雀様の方とちゃいますか?そないなことで怒られる謂れはありませんで」
「あ、いや、恭弥もういいから…」


結局、謎は簡単に解決してしまった。
昨日の会話はこういうことだったらしい。


『もうすぐ完成しますんで、明日にでも来て下さいね』
「……うん、それじゃあまた明日。いつものホテルで」

『彼女さんには内緒言うてましたけど…バレとるんちゃいますか?』
「……うん、大丈夫、バレてない」

『ならいいですけど、今度は遅刻せんといて下さいね。いくら彼女さんの方が大事とはいえ、こっちも彼女さんに繋がるもんですからね』
「わかってるよ、明日は遅れないから」

『ちゃんと注文通りできてましたでしょう?』
「とても綺麗だったよ」

『そしたら、また明日。徹夜で完成させますんで、楽しみにしといて下さいね』
「よろしくね、ナツキ」

『…ほんまに、彼女さんのこと好きなんやなぁ…』
「――うん、好きだよ」




気が抜けて倒れこみそうになる私を、恭弥がすかさず抱きとめる。
申し訳なさそうな顔をする恭弥を安心させるように微笑んで、「ごめんね…ありがとう」と告げると、安堵したように微笑み返してくれた。
そんな私達をにやにやしながら見ていた夏木さん(名前だと思っていたら、名字だったらしい)が揶揄するように恭弥を肘でつついて話しかけた。


「雲雀様?サプライズもええですけど、気ぃつけやんとこないなことになりますで?言葉っちゅうんは酷く曖昧で身勝手やからなぁ…」
「……うるさい、」
「そもそも、雲雀様がやたら希少な石ばっか注文つけんのがあかんかった思いますで?あんなん短期間で見つかるかっちゅうんですよ」
「…だから君を頼ったんじゃない、金さえ積めばどんな高価な石も希少な石も見つけてオーダーメイドで作るっていうのが売り文句でしょ?」
「そやかて、限度がありますわ!ほんま、どんだけ彼女さんが好きなんやねん!こないな代物、確かに正真正銘、世界でただ一つの指輪やわ!!」

「…愛してるんだ、このくらい当然だろう?」


その言葉にまた、胸の奥が熱くなった。






言葉というものは酷く曖昧で身勝手だから
(後をつけなきゃ、きっとすれ違ってた)



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