「え…?玲…?」
驚いたような恭弥の声が聞こえる。
覚悟を決めて閉じていた目を開けるが…そこには、私の思っていたような光景はなかった。
「…え?恭弥…どういうこと?」
部屋にいるのは、確かに恭弥と女の人。
でも、そこらじゅうにわけのわからない機材が散乱しているし、恭弥はイライラと女の人を睨みつけていたみたいだった。
そもそも、女の人は恭弥なんかそっちのけで何か作業をしている。
おかしい。私の思っていた浮気じゃない。
…違う。
もしかして、恭弥は浮気してたわけじゃなかったの?
「え、っと…」
「玲…どうしてここに…」
「あの、その…き、昨日…」
「昨日…?」
「昨日…恭弥が電話してたの、聞いちゃって、それで…」
「……浮気と間違えた、とか?」
「「!?」」
今まで全く顔を上げなかった女の人が、突然話に入ってくる。
驚いて視線をやると、疲れ切った表情でこちらを見つめていた。
恭弥は状況がわかってないのか、私と彼女の顔を見つけて首を傾げている。
「いや、私も後でおもたんですよ。昨日の電話、彼女さんに聞かれてたら多大なる誤解を生みかねない会話やったなあ…と」
「玲、ナツキ…君たちだけで納得しないでくれる?」
「いや、だから…彼女さん、昨日の会話聞いてて雲雀様に浮気疑惑持ったんちゃいますか?」
「え…?そうなの?玲」
「へ!?え、えっと…」
「あ、遅うなりました。私、雲雀様に雇われたジュエリーデザイナーの、夏木ユリといいます」
「ジュエリーデザイナー…?」
「ナツキ…!」
「ええやないですか、このままやったら彼女さん、ずっと雲雀様が浮気してたと想い続けますで?ほら、ちょうど依頼の品も出来上がったことやし…」
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