信じたくなかった。でも、聞いてしまった。
「……うん、それじゃあまた明日。いつものホテルで」
夜中にふと目が覚めて、気付いたら、隣に恭弥がいなかった。
水でも飲みにいったのかな?と深く考えずに私も水を飲みにいって、それで。
そこで聞いてしまった、電話での会話。
ベランダに出て携帯で話している恭弥の姿。
ここ最近忙しそうにしてたから、最初は仕事の話だと思った。
でも、その表情はとても柔らかくて…私に向けるものと、同じだったのだ。
一瞬で眠気が覚めてしまう。
そのまま影に隠れて、会話を聞いていた。
「……うん、大丈夫、バレてない」
「わかってるよ、明日は遅れないから」
「とても綺麗だったよ」
「よろしくね、ナツキ」
浮気。
その言葉が頭に浮かぶ。
必死に否定しようとしても、次の言葉が私の心を抉っていった。
「――うん、好きだよ」
嘘だと、叫びたかった。
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