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僕は、多分とても間違っているんだろうね。
だけど僕は、こんな愛し方しか出来ない欠陥品だから。
間違ってるってわかってても、それに対して何も思えないから。
だから多分、こんな人間は、誰かを心底愛すべきじゃないんだろうね。
それでも僕は、あの子を見つけてしまったから…

そんな風に、普段の自信の欠片もないような自虐的な言葉で、雲雀の言葉は始まりを迎えた。


そもそも、愛って何だと思う?
好きって気持ちは、一体どこから溢れるの?
大部分の人間は心って答えるんだろうけど、僕は違うと思う。
誰かを好きになると、きっと脳の大事な回線がイカレてしまうんじゃないかってね。
普通の愛なら違うだろう。でも、たとえば「運命」の相手に出会ったなら?
脳髄に走る微弱な電波が相手の電波と共鳴し合って神経を荒廃させるかの如く、正常な理性のようなものが弾け飛ぶんだ。
僕の場合はそんな感じだった。
多少はあったかもしれない正常な判断力でさえも、あの感覚の前には無意味だった。

多分。僕はあそこで、狂った。

そもそも「運命の相手」って何?
そこらの草食動物たちは軽々しくその言葉を使うけど、どういう意味で使ってるのかな?
大好きな人?恋人の総称?それとも、ただの口説き文句?
……くだらないね。
そんなんじゃない、僕にとってのそれは、唯一絶対の存在だ。
他はいらない、彼女だけでいい。
世界には、彼女と僕の二人だけでいいよ。

君の境遇になぞらえるならね、浮気するなんて信じられないよ。
それで「運命」?ふざけてるの?
なんで他の相手が必要なの。
は?一時の気の迷い?…迷う時点で、運命じゃないじゃない。
倦怠期はまぁ、仕方ない現象と認めてあげてもいいけど…そこから浮気に繋がるなら、そんなのは「唯一絶対」の最愛じゃないよ。

…ま、さっきも言ったようにこれは僕の持論でしかないからね。
反論くらい聞いてあげる。聞くだけだけど。
…ないの?じゃ、続けるよ。

そうは言っても、皆が皆こうじゃないことぐらいは理解してるよ。
いや、違うな。
全員が全員僕みたいだったら、大変だろう?
だからね、きっと大半は「運命」とやらに出会えないように出来てるんだ。
そして僕は、たまたま出逢ってしまったんだろうね。
それを幸福と呼ぶのか不幸と呼ぶのかは、僕にもわからないのだけれど。
出遭った者だけが抱く狂気とも呼ぶべき愛執。
たぶんそれは。選ばれた者の領域。
あるいは。選ばれなかった者の領域。
相対的に見て、抱く感情は正しいのだという領域には、選ばれなかった者の領域だ。

それはきっと、どうしようもなく間違っているのかもしれない。
だけど、どうしようもなく本物だと、思ってる。




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