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それに比べ、自分は何だ。
かっこ悪く俯いているだけ、何も出来ずに蹲っているだけ。
自分だって、あの人が好きだ。
それなのに…

ツナは、沈んだ思考を戻すように手のひらを握り締める。
自分の、最愛の恋人を思い浮かべた。
きらきらと輝くあの笑顔を、悲しい笑みを、優しい微笑を。
雲雀と同じように、ツナにも大切な恋人がいた。
大好きだった。守りたかった。こんな自分でも、ダメダメでも、マフィアのボスでもいいと言ってくれた、優しい人だった。
だけど…


「本当に、君は馬鹿だ。どうして黙っているの…僕なら、許さない。絶対に許さない。どういうことだと問い詰めて、相手の男を殺してやる。監禁でも何でもして、もう二度と裏切らないように、徹底的に身体に仕込んでやる――その結果、心に傷を負わせたって、構うもんか。僕の付けた傷なら愛しい、一生かけて癒してあげればいいんだから。癒えなくても…僕の存在は彼女に残るから、構わないし」


ねぇ、沢田…?


「っ、あ…お、れ…」


雲雀の声が、吐息が、存在が。
ツナの心を揺さぶっていく。
彼の狂気にあてられて、無意識に身体が震えた。


「どうして、彼女の浮気を見逃すの――…」


言わないで、
心が、壊れてしまいそうだから



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