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馬鹿みたいと笑った。
五月の陽気が心地よい季節だった。





それは別に何かのきっかけがあったわけではなく。
あえて言うなら、清々しい陽気に眩暈を覚え始めた季節に、それを見てしまっただけだった。


「別れよ。もう、貴方と付き合ってはいけないから」


浮気だなんて、きっとされてしまう方が悪いのね。
惨めな自分を隠してプライドを保つには思うしかなかった。
私が悪いのよ。だって、そうでなきゃあまりにもくだらなくて、笑えるくらい、無様だわ。
嫌いよ嫌い、男なんて。
男は浮気をする生き物だから、とでも言えばいいと思っているのかしら。
それとも、愛してるとでも言えばいいと思っているのかしら。
そんな安っぽい言葉じゃ騙されてあげないわ。御機嫌よう、ミスター。
貴方に最大級の不幸があらんことを!





「男は愚かな生き物だけど、それだからこそ"愛してる"だなんて科白が真実味を帯びるんだよ」
「まぁ、都合のいい理論ね」
「間違いのないセオリーなんて薄っぺらいよ」
「それじゃあ貴方、どんな言葉で女を口説くの」
「御機嫌よう、レディ、馬鹿な男に騙されてみないかい?」
「率直な言葉ほど美しいものね!」


どこかのバーで始まる恋愛?
まるでどこかの安っぽい恋愛小説みたいね!
使い古された陳腐な愛情表現が廃れていかないのは、それが最上級の愛だからかしら。

「あちらのお客様からです」なんて、恋ってお酒から始まるものね!
アプリコットフィズ。
振り向いて下さい。

ブルームーンは頼まないわ!






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