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突然混乱してしまった先輩をあわてて落ち着かせる。
どういうこと…?
こんなとこって…巣、って…コントロール効かなくなるって、どういうこと?

「ごめん…玲ちゃん、ごめん…っ、」
「大丈夫…先輩、大丈夫ですから、落ち着いて?」
「でも…僕は、君を…大好きな君を、食べようと…玲ちゃんを、無意識に、獲物だと…っ」
「食べ…?獲物?…どういう、ことですか…?」

どくん、どくんと、心臓が嫌な音を立てて暴れる。
噛みしめられた先輩の歯、その中の二本の犬歯がやけに尖って見えて…あわてて首を振る。
駄目だ。
怖い、なんて思っちゃ…駄目。

「先輩…教えて下さい。どういうことなんですか…?」
私は、真実を知りたい。
「……、…これから、話すことは…全部、本当のことだよ」
「はい…」
「…あのね、僕は……人間、じゃ…ない。蜘蛛の…化身、だよ」
「……蜘蛛、の…」
「そう…あ、でも別に本性が蜘蛛って意味じゃないよ。その特徴を持った人間、ってのが、言い方的には正しいかな…」
そう言って、少し自嘲気味に笑いを零す。
あの日…私が先輩に一目惚れした時のように、儚い表情だった。

「……気持ち悪い、よね、こんなの……ごめん」
「っ……せんぱい…違い、ます。ちょっと、驚いただけで…」
「いいよ、別に…気を使う必要なんかない。こんな…化け物に…優しくしなくていいよ」
明るく笑っているけれど、その心までは決して笑っていない…今にも泣きそうな目が、何よりそれを物語っていた。



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