short | ナノ
おかしいな、と思ったのは、今日のことだけじゃなかった。
やたらと綺麗な容姿もそうだけど、彼は酷くなわばり意識が強く、他人が自分のテリトリーに無断で立ち入ろうものなら容赦なく潰す。
なわばりって言っても、もちろん物理的なものじゃなく、概念的な…つまり精神的なものだけれど。
自分が心を許した存在に害なすものは徹底的に嫌うし、それ以外には興味すら抱かない。
いや、興味はないが警戒している、というのが正しいのかもしれない。
張り付けた笑顔は彼の防衛策。
優しく作った外面は、獲物を捕えるための手段。
そんな人だった、私の好きになった沖田総司という先輩は。

好きになったきっかけは、私がこの学校に入学したあの日。
皆が帰った後、たまたま通りかかった中庭の桜の木の下で初めて総司先輩を見かけた。
はらはらと花びらが散る桜吹雪の中で、先輩は…一人静かに泣いていた。
綺麗な翡翠の瞳から、透明で透き通った涙の雫が、ただただ流れ落ちていく。
その様に、私は目が釘付けになった。
余りの美しさに…声すら出なかった。
その瞬間、私は恋に落ちたんだ。

まぁ、入学してからの噂を聞く限り、最初のような儚いイメージはなくなってしまったけど。
その噂っていうのは、まぁとんでもない問題児だってこと。
授業妨害なんて序の口で、授業サボるわ遅刻はするわ勝手に帰るわ授業中携帯弄るわ音楽聞くわ寝るわで大変らしい。
でも、どんな噂を聞いたって好きって気持ちがなくなったりすることはなかった。
苦しかったり悲しかったり嬉しかったり…色んなことがあったけど、総司先輩に告白されて…晴れて、恋人同士になれた。

今日は、初めて総司先輩の家にお泊まりする日。
一人暮らしの彼氏の家に泊まるということは、まぁ、そういうことで。
今までにも身体を重ねたことはあったけど、先輩の家に行くのは初めてだったから、期待半分不安半分で、放課後に一緒に帰った。



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