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木曜日。

薄桜学園の一年生である千鶴は、帰り支度をしていた。
千鶴は剣道部のマネージャーをしているが、今日は部活が休みのため、これといった用事はない。
家に帰って本でも読もうかな、などと考えていたその時。
廊下から黄色い声が響いてきた。
何だろう、と思い廊下に出てみると、そこにいたのは…

「こんにちは、千鶴ちゃん。もう帰るの?」
「お、沖田先輩!?」

沖田総司、彼だった。
剣道部主将である総司とマネージャーである千鶴は少なからず接点があったが、それ以上に、千鶴は彼のことをよく知っていた。
茶髪にピアス、サボリ魔遅刻魔で剣道インターハイ前年度優勝。
サボっているくせに成績は古典以外そこそこで運動神経抜群。
甘い笑顔で女を惑わす魅惑の存在として学園中で噂になっていたからだった。

だが、マネージャーになってわかった彼の秘密…いや、本人はかなりオープンだが、とにかく彼の秘密にはさすがに千鶴も驚いた。
総司は重度のシスコンである、という事実である。
校則違反なピアスを付け続ける理由は、その翡翠のピアスが姉からの贈り物だかららしい。
ドが五つは並ぶであろう究極のSである彼も、姉には頭が上がらないらしく、いや、逆らうという概念すら彼にはないのか、どんな理不尽な命令でも姉のならば喜んで聞いていた。
そんな彼に、人間臭さを見たのか多少は気を許した千鶴。
総司も、まともに相談に乗ってくれる千鶴をかなり分かりにくいながらも可愛がっていた。
…虐めていることの方が多いが。
(ちなみに、他の面々は触らぬ神に何とやら…と言って話すら聞かない)

「今日はどうしたんですか?一年の階に来るなんて…」
「千鶴ちゃんをお誘いに」
「わ、私ですか?」
「うん、ちょっと相談があってね」

周りの女子の視線に怯えながらも、相談ならばと了承する。
すると、総司は安堵したように笑って、一通のメールを見せた。

「さすがに、どれ買えばいいのかわからないんだ」
「……これは、ちょっと…」

思わず同情してしまった千鶴。
無理もない。
メールに書かれていたのは、たった四文字。







【ナプキン】








さすがの総司も、お手上げだった。



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