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火曜日。

珍しく遅刻をしなかったらしく、総司は朝から教室にいた。
自分の席に座って、携帯を弄っている。
その表情が緩んでいる辺り、メールの相手は彼の愛しの姉だろう。
そんな総司に、斎藤が近づいてくる。
そして、驚いたように声をかけた。

「…あんたが遅刻をしないとは、明日は槍でも降るのだろうか…」
「ちょっと、その言い草は酷くない?僕だってたまにはちゃんとくるよ」
「嘘を言うな。理由も無しにくるわけがないだろう」
「うわー酷いな一君。…まぁそうだけど」
「認めるのか。で、何故遅刻しなかった」
「そんなの決まってるじゃない」

そこまで言うと、どうやらメールは終わったのか、若干寂しそうな顔をして、総司は携帯を閉じる。
そして、いっそ清々しいまでに綺麗な笑顔で言い切った。

「姉さんが昨日、寝る前に遅刻しないようにねって言ったからだよ」

斎藤は思わず固まった。

「……それだけか?」
「それだけって何さ、重要なことだよ。姉さんに言われたんだから、万が一にも遅刻するわけにはいかないじゃない」

頑張って早起きしたんだよね〜と笑顔で言う総司に、斎藤はもう何も言わなかった。

否。

何も、言えなかった。



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