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月曜日。

いつものように、総司は適当な女の子と下校していた。
歩きながら女の子が話し掛けるのに笑顔で返事しているが、脳内を占めているのは主に愛しい姉のことばかり。
女の子の名前すら忘れている始末だった。
うん、とか、そうだね、といった適当な返事を返している。
しかし、恋は盲目の説は正しかったのか、全く気付かれていなかった。

駅の前を通りかかった時、不意に着信音が鳴り響いた。
その音楽を聞いた途端、総司は、光もビックリな早さで携帯を取り出す。
そして、今までとは全く違う緩んだ笑顔で返信を打つと、女の子に笑いかけ、


「急用が出来ちゃった、またね」


とだけ言い残し、さっさと駅に入って行ってしまう。
残されたのは、ポカンとした表情の女の子だけだった。



メールの内容は
【ケーキ買ってきて。】の一言である。
送信者――【玲姉さん】だった。

ちなみに、ケーキ屋ならば総司の家の近くにある。
なのになぜ、総司が電車に乗り二駅先のケーキ屋までわざわざ買いに行ったのか…。
簡単な理由である。
姉のお気に入りであるチーズケーキをあの店で買っていったところ、大変お気に召されたからだ。
総司に、あーん、で一口くれる程に上機嫌だったらしい。
以来、総司は、チーズケーキだけはあそこまで買いに行っている。

総司の優先順位は、一に姉で二にも姉、三にも姉で四にも姉。
五あたりにようやく自分がきている。
ケーキを買い終えた総司の頭から、一緒に帰っていたあの女の子のことなどすっかり抜け落ちていた。



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