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「だって女王陛下がそう言ったんだよ、首を刎ねよ!って。でもほら、俺ってば弱虫だから、首を刎ねるなんて此処じゃ上手く出来ないし、道具も無いし、だから、ちょっとそこから落ちて貰おうと思ってさ。そしたら綺麗に真っ赤な花が咲いて、あの人の大好きな、赤い薔薇が出来るでしょう?」


沢田綱吉が転校生を虐めているという話は、最近の並盛では有名なものだった。現実味の無いその噂に勿論、彼と親しい友人達は困惑したし、有り得ないと否定をして回ったが、何分それを否定出来るだけの証拠が無かった。転校生の少女が綱吉に何かされたと述べる頃、確かに綱吉は一人でいたし、誰かに目撃されることも無かった所為で強く出られなかった。基本的にダメツナと呼ばれ、校内で馬鹿にされることの多い綱吉と、転校生ながら明るく誰からも好かれた彼女とでは転校生を信じる者の方が多かったこともありにっちもさっちもいかなくなった頃、事件は起きた。



沢田綱吉が、転校生を屋上から突き落とした。
少女は木に引っかかって奇跡的に一命を取り止めたものの、その場に居合わせた生徒達は、あまりの光景に思わず腰を抜かした。

だって、最初は、ほんの冗談だったのだ。

本当は半信半疑だった、本当に綱吉が虐めをしていたかどうかなんて、そんなのは関係なかった。転校生を信じて、好いたり、愛したりしていた訳でもなかった。ただ、ダメツナを弄る口実が出来た、と、綱吉を詰った訳なんて、その程度のものだった。
なのに何だ、あの顔は、あの表情は、あれは。あれは本当に、"ダメツナ"か。



「女王陛下は怖いんだよ、お茶会に遅れるといっつも怒るんだ。俺が時間に遅れるんじゃなくて、時間が俺に遅れるっていうのにね。でも仕方ないんだよ、俺達の愛しの暴君様は白色が何より嫌いなのさ、あの人は赤と黒をこの上なく愛してる、白のキングに一度城を責められてからはとんとお冠だよ、だからあの子が嫌いなんだって、"白薔薇姫"なんてあだ名を持った転校生なんて赤の女王様に嫌われて当然じゃないか!だってあの人はハートの女王様!赤を抱く陛下はあの人だけでいいんだよ、だから先代のレッドクイーンもあの人に座を明け渡したのさ。それからはずっと鏡の国も不思議の国もあの人のもの、今更ホワイト如きが盾突くなんて、嗚呼それって何て。―――――身の程知らず。」


これは誰だ。
これは何だ。
これは一体。何なんだ。


つらつらと流れ出す妄想としか思えないたわごとに身体が動かない。ひたりと額から流れ落ちた冷や汗が地面に届くその前に、モーセの十戒の様に、人垣が割れた。ベージュ色で構成された人波の中に、唯一歴然と翻る黒が見える。並盛の暴君が騒ぎを聞きつけてか、突き落とされた少女と腰を抜かす生徒を順に視線で辿って、そして最後に、屋上で笑う綱吉を見上げた。




「……君は薔薇一つ満足に植えられないのかい?」
「うう、ごめんなさい女王陛下。白薔薇が嫌いな貴方の庭に害虫を蔓延らせてしまいました……お詫びします償いますから処刑だけは許して下さい!」
「そう言って君は何度失敗したんだい?何枚僕のトランプを貸してやれば気が済むの、ねぇアリス。とりあえず一回首だけになってみるかい」
「ごごごごごめんなさい何でもしますからそれだけは…!」







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