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なんて美しいんだろうと、純粋にそう思った。
通りかかった森で死に掛けている人を拾って、手当てしていたらふと感じた気配。
見つからないようにと木の根に隠れて様子を伺ってみたら、そこにいたのは傷ついた一匹の山犬で。
大きな傷跡に一瞬怯んでいると、そこにやってきたのは黒髪の美しい少年だった。
白い山犬の背に乗って、もう一匹の山犬を引き連れて、そこにいた山犬の傍に駆け寄るとおもむろに傷口から何かを吸い出している。
呆然と見つめていると、傷ついた山犬がこちらに気付いたのか、低く唸った。
覚悟を決めて、石の上に立つ。
想いっきり息を吸い込んで、大声で叫んだ。


「俺の名前は、綱吉です!東の果てよりこの地へ来ました!貴方方は、シシ神の森に住むと聞いている、古い神ですか!?」


言い切った。
こちらに視線を向ける少年の容貌が、今まで俺が見てきたどんなものよりも美しいのに息が詰まる。
口に含んだ血を吐き出して、口元を拭って俺と視線を合わせる。
痛いくらい、真っ直ぐで淀みない視線だった。
けれど、彼らは俺の言葉を聞いているのか聞いていないのか。
傷ついた山犬が森に消えていくと、彼らも続いて姿を消してしまった。
「…去れ!」
そんな言葉だけを、残して。



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