ネタ帳 | ナノ
  転校生達 //

その日は、朝からとても騒がしかった。
理由は、あの有名な薄桜学園からの転校生…ということにある。
なんでも、課外授業の一貫…らしい。
やっぱりあそこはよくわからない学園だ。

「なぁツナ、知ってるか?」
「え?なにが?」

不意に山本から話しかけられる。
知ってるか、って…何が?

「今回転入してくるやつらってさ、学園内外でも滅茶苦茶有名なグループなんだってさ」
「へぇ…どんな感じなの?」

ほんの少しの興味で問い掛ける。
ただの、興味だった、のに。

「それがな…皆、剣道部らしくて…すげぇ強いんだとよ。剣道って感じじゃなくて、もう剣術…殺人剣の類だとまで言われてるらしい」
「……え?」

殺、人…剣…。
それは、相当強いってことだ。

「だけど、試合には滅多に出ないって噂だぜ。たまに出ると、簡単に優勝してるって言うし…」
「それは…凄い、んだね」
「だよな!あ、あと…その剣道部の部長と副部長は、学園の二大王子とか言われてるらしいぜ」
「それも…凄い、ね…」

何と返したらいいかわからない。
何だ、二大王子って!?

「それと…」
「………?」

今まで笑っていた山本が、急に真面目な顔になった。
トーンを落として、険しい表情を浮かべていた。

「…これは、噂だから…あんま気にしねぇ方がいいと思うんだけどさ……その、剣道部副部長…」
「副部長さんが…どうかしたの?」
「こんな噂があるらしいんだ……"死にたくなければ、あいつの彼女に手を出すな"」


どくん。
心臓が、やけに大きく脈打った。
嫌な汗が伝う。
未来で鍛えられた超直感が、その噂が本当だと告げてくる。
得体の知れない恐怖が脳の内を支配していく感覚を、やけに冷静な頭で感じていた。








「はい、では転校生を紹介しますねー」

少し弾んだ先生の声で、はっと現実に引き戻される。
いつの間にか、HRが始まってしまっていた。
壇上には、噂の転校生であろう三人が立っている。
まだ制服が間に合ってないのか、全員が薄桜学園の制服に身を包んでいた。


「俺は藤堂平助!よろしくな」

人懐っこそうな少年が元気よく自己紹介をする。
犬のようにくりっとした瞳が興味深そうに教室を見回していて、なんだか可愛らしかった。

「えと…ゆ、雪村千鶴といいます。皆さん、よろしくお願いします」

続いて、その隣にいた女の子。
いかにも女の子って感じで、純粋に可愛い。
緊張しているのか、少し頬を赤らめていた。

(何だか、美人ばっかりだ…)

薄桜学園は男女共にレベルが高いって聞いてたけど、本当なんだな…と、今更ながらに思った。
実際、藤堂君と雪村さんはかなりかっこいいし可愛い。
最後の一人は、俯いているせいで顔は見えないが、きっと二人に負けず劣らず美人なんだろう。
そう思っていると、不意に彼女が顔を上げた。

「神澤…葵、です。よろしくお願いします」

ペコリ、と小さく頭を下げる。
また、心臓が嫌な音を立てた。
確かに彼女は可愛い、それに綺麗だ。
だけど…今の胸の高鳴りは、それとは違う。

色白の、薄幸の美少女と称されるような彼女を見て、無慈悲にも俺の超直感は告げた。



(彼女だ、と──…)



prevnext
[ 3/4 ]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -