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《sideネロ》

俺は目の前の光景が信じられなかった。
「ヘイ、坊や!なんて顔してんだ?」
「おっさんのせいだろ!なんで…なんで俺とそう変わらねえ姿になってんだ!?」
目の前にいるおっさん。もとい「最強の悪魔狩人ダンテ」。
三十代半ばだったはずなのに、なんで若返ってんだ!!
以前聞いた、おっさんの兄貴と壮絶な兄弟喧嘩を繰り広げた辺りの年齢になっている。確か、18.9歳だったはずだ。
前写真も見たことあるから、間違いない。
好戦的で不敵な笑み。写真とそっくりなはずなのに、目の前の奴の方が底知れぬ空気を感じるのは、やはりあの頃よりも経験を積んだからなのだろうか。
要は、チートがさらにチートになった。そんな感じだ。
おかしいだろ。常々おかしい奴だと思っていたが、これはおかしいだろ。
確かに、時間を操ったりドッペルゲンガーを出したりといった能力を持ってるのは知ってるが、これはおかしいだろ。

「うるさいぞ愚弟!!」
「いってぇ!!」
なんて思考に沈んでいたら、いきなり俺の横を幻影剣を飛んでった。
「ちょ、バージル!叫んでたのは坊やだろ!」
「そうだな、だがとりあえず死ね」
「超理不尽!」
「ダァ―――イ!!」
続いておっさんに斬りかかる青い人影。おっさんの兄貴のバージルだ。
双子なだけあって、顔や体つきはおどろくほど似ている。オールバックにしている髪を下ろして同じ服着て、二人とも黙って立ってたら絶対に見分けられない自信がある。
まぁ、その分性格が真逆なんだがな…
「お、おい。おっさんの兄貴。これはどういう……ってえええええ!!?」
叫んだ。俺は大絶叫した。
なんで、何で…
「なんでアンタまで若返ってんの!!?」
英雄剣士スパーダ。その血はなんでも有りなのか!?
(それなら俺も何でも有りになるということにまで、この時の俺は思考回路が回らなかった)


「…要するに?昨日の依頼の悪魔を倒したら、二人の身体にその力が取り込まれたと。どんな力かと試しに使ってみたら、好きな歳に若返ることが出来る力だったと…」
「そういうことだ」
「今の歳より上に出来ねえから、《リジュヴィネート(若返り)》って名づけたんだよ」
おもしれーだろ、と言ってけらけらと笑うおっさん(ちなみに、格好は昔と同じで上半身裸に赤のコートだ。本当に趣味を疑う)。…と言っても、この若さの奴におっさん呼びはいくら相手がこれでも気が引ける。
ので、俺は呼称を変えた。
「おい、若…」
「「若?」」
二人が同時に首を傾げる。こんな時になんだが、二人の表情は驚くほど似ていた。
「そ、若。おっさんのことだよ。さすがに俺と同い年近い奴におっさん呼びはな…ちょっと、」
「なーる。だから若、ね…もうちょい捻れよ、坊や」
「うっせ…」


「けど、おもしれー能力だよな。うし、挨拶がてらアルトを脅かしてやるか」
「え、会いにいくのか?」
アルト。おっさん…じゃなくて若が昔拾ったらしいクオーター悪魔の奴だ。本名はアルエット。フランス語で、雲雀を意味している。
今は確か、日本にいるはずだ。俺より少し年下だが、意外にも仲は悪くないので本音を言えば会いにいきたい。
「おう、たまには可愛い弟分の様子を見にいってやらねえとな」
「……ま、そういうことだ」
おお、若の兄貴が若に珍しく同意した。
何だかんだ言って、二人は仲がいいのかもしれない。
そんな、若の兄貴が聞いたら間違いなくダァ―イ!されるようなことを考えながら、俺達は荷造りを始めた。



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