ネタ帳 | ナノ
  再会、そして始まり //



「…まぁ、そういうわけで、ろくに事情も聞かずここに放り込まれたというわけです」
「なるほど」
「でもどうせ、君と彼の悪巧みでしょう?」
「聡いことだ」
「でなきゃ、君の町に転入できませんよ」


人気のない廊下の奥。この学校の、いやこの街そのものに君臨する風紀委員長様の根城にて、そんな声が聞こえてくる。
中にいるのは言わずもがなな雲雀と、先ほどここ並中に転入してきた少年、赤司征十郎…ではなく、彼の影武者であった黒子だった。
容姿は赤司そのものだが、口調や纏う雰囲気ががらりと変わっている。
律儀に出されたコーヒーを啜ってのんびりと慣れたようにくつろいでいる。


「で?僕は何をすればいいんですか?赤司くんからはこれ以上の指示を受けてないので、この後は君の指示に従うことになると思うんですが…」
「ああ、大丈夫、伝言を預かってるから」
「伝言…ですか?ずいぶんとまだるっこしいやり方をしますね…」
「それが征だろう?で、彼の指示だけど…近いうちに彼自身がくるから、その時点で入れ替わり、だってさ。その時皆転入ってことになってるから。目立つのは構わないけど、目を付けられるようなことはするな。…だそうだよ」
「なるほど…了解しました」
「僕はこの件に関しては、表向きあちら側の立場をとるから。今、僕がキセキに関わっていると知られるのは困るんだ」
「ああ…なんでしたっけ?雲の守護者?みたいなのにさせられてるそうですね」
「拒否してるんだけどね…人の話を聞かないんだよ、あそこは」
「お疲れ様です、じゃあ、そろそろ行きますね」
「ああ。――もう帰っていいよ、"赤司"」
「…失礼しました」


瞬時に空気を変える。
雲雀は、普段の風紀委員長の顔へ。黒子は、赤司征十郎へ。
応接室から出て行った"赤司"の姿を見送って、雲雀は再び執務机に戻る。
大量の書類に手を伸ばしたところで…不意に携帯が鳴り響いた。
そちらに視線をよこさずに手に取り、そのまま通話ボタンを押して耳に当てた。


「もしもし、敦?」
「あ、恭ちーん?あのねー赤ちんから伝言ー、三日後に交代だってー」
「三日後ね…わかった」
「こないだの地震で集団転校がどうのこうのってあったでしょー?それに便乗するんだってさー」
「だろうと思ったよ。じゃあ、皆予定通り来るんだね?」
「そうみたいー、よろしくねー」


そういえば、近々、ボンゴレの継承式なるものが開催されるらしい。
とてもいいベストタイミングだ。
笑う声は誰にも聞こえない。



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