02


その次の日。
昨夜のことを考え過ぎていて、寝不足気味の千鶴は平助と共に教室の机に突っ伏していた。
ちなみに、平助はゲームのし過ぎでの寝不足である。
普段なら真面目に聞くであろうHRの話すら頭に入ってこない。
脳裏に浮かぶのは、昨夜の人形のような美しさをもつ葵と名乗った少女のこと。
なぜ、彼女は自分にあんなことを言ったのだろう。
そんな疑問ばかりが頭の中をぐるぐると巡っている。

(あの時に聞こえた、謝罪の声…あれは、きっと彼女の…SOS…)

そんなことばかり考えていると、HRの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
それを聞いた土方は、こう話を締めくくった。

「あー…じゃあ、そういうことだ。それから、雪村。ちょっと話がある、今から来てくれ」
「……え、私ですか?」

突然、自分の名前を呼ばれた千鶴は驚いて聞き返す。
それに土方は、ああ、すぐに済む。とだけ返し、足早に教室から出ていく。
千鶴は慌ててその後を追った。

「土方先生、話って…」

人気のない廊下、そこでようやく足を止めた土方に、千鶴はそう問い掛ける。
振り向いた土方の表情は、いつも以上に真剣だった。
思わず、心臓が竦む。
そして、普段とは違う声音で、土方は言葉を吐き出した。

「…単刀直入に言う、総司に近付くな」
「え…?先生、それってどういう…」
「悪い…理由は、言えねえ。だが、これは忠告…いや、警告だ。これ以上総司に関わるな」

……早く、逃げて。
昨日の少女の言葉と、土方の言葉が、千鶴の中で重なった。
沖田から逃げろ、と、関わるな、と。
彼らから告げられた二つの警告に、千鶴は混乱してしまう。
土方には何も答えられず、重い足取りで教室へ戻っていった。

きっと、沖田や斎藤、そして土方と…彼女、葵の間には、何か確執がある。
それを理解していながらも、彼らを取り巻く大きな謎に関わる勇気は…今の千鶴には、なかったから。


<< | >>


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -