01


その日の夜。
土方は残業のため、かなり遅くまで職員室に残っていた。
一人、また一人と他の教員が帰っていく。
先ほどまで一緒にいた原田や永倉は、一足先に帰ってしまった。
ついに最後の一人になってしまい、さすがに切り上げて帰ろうかと思ったその時、窓から見えた人影に眉を顰める。
そこにいたのは、沖田だった。


「あいつ…こんな時間になにやってんだ?」


土方と沖田は、昔から何かと縁があった。
もちろん、土方にとって一番付き合いが長いのは学園長である近藤だが、その次に長かったのは沖田総司、彼である。
幼いころに両親を亡くした沖田が、両親と仲のよかった近藤の家に一時預けられていたことが始まりで、何だかんだで付き合いが今まで続いている。
生意気で捻くれていて、嫌味ばかり言いながらも自分を慕ってくる沖田を、土方も可愛がっていたからだ。
彼に凄まじい魔法の才能があることを見抜いたのもまた、土方だった。


「ん…?いや、一人じゃねえな。隣にいんのは…っ!」


沖田の隣に、誰かの姿を見た瞬間、土方は顔色を変えて職員室を飛び出した。
その顔に、いつものような余裕はない。
(まさか、そんなはずはねぇ…アイツが、いるわけがねぇ!)
頭に浮かんだ一つの可能性を無理矢理振り切り、階段を駆け下りる。
校舎の外に出ると、先ほど沖田の姿を確認した場所へと足を急がせる。


「ぁ、総司…」


ふと、女の声が聞こえた気がして足を止めた。
今、確かに総司、と名を呼んでいた。
校舎の傍にある森のように木が密集する場所に早足で歩いていく。
しばらく行った時、視界の端に見慣れた後姿が映った。
なるべく足音を顰めて近づくと、沖田が女を木に押し付けている様子がわかった。
状況が掴めないので、とりあえず二人の会話に聞き耳を立ててみる。


「総司ぃ…好き、」
「ふぅん…君、僕が好きなの?」
「うん、好きだよぉ」
「そう……なら、君の"魂"…ちょうだい」
「え……?」


そう言うと、沖田は女の額に手をかざす。
そして、小さく呪文を呟く。
一瞬、女の目が見開かれたかと思うと、彼女は糸が切れたかのように気を失い、そのまま崩れ落ちた。
沖田が抱きとめることはなく、女は地面に倒れこむ。
それを見下ろす沖田の瞳は酷く暗く、そして冷たい。




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