01


完全に普段通りの状態に戻った沖田と斎藤、そして千鶴と平助は屋上に来ていた。
斎藤に千鶴の勉強を見てもらうだけのはずだったが、乗り気なのは斎藤よりもむしろ沖田である。


「さて、と。千鶴ちゃんは何が苦手なの?」
「今日はとりあえず、あんたの得意不得意を把握しておこうと思う」
「わかりました。えっと、私は攻撃系が苦手なんです…初歩の初歩は、今日ようやくできるようになったんですけど…」
「初歩の初歩…それって、これのこと?」


そう言うと、沖田は座ったままおもむろに右手を突き出す。
授業中に千鶴達がしていたのと同じ構えだった。
だが、呪文を詠唱する素振りは見られない。
それに千鶴が首を傾げたその瞬間。
沖田の手のひらを中心に凄まじい風が吹きすさぶ。
クラスのどの風属性の者も、こんな圧倒的で身を裂くような風は出せなかった。
思わず息を呑む。
平助の言った、天才という言葉を身をもって理解する。
千鶴のその表情を見た沖田は、少し笑って、開いていた手のひらをぎゅっと握った。
まるで、何かを握りつぶすかのように。
その動作によって、彼の放っていた風が、一瞬の間を起き、彼の手に戻ってくる。
沖田がさらに強く握ると、硬いコンクリートの壁が、いとも簡単に破壊された。
あまりのことに、千鶴は言葉を失くす。


「あはは、びっくりした?」
「総司、やりすぎだ」
「このくらい普通だって。というか、君が相殺してくれたから、かなり威力が落ちたじゃない」
「相殺…?」


聞こえた言葉に眉を顰める。
というより、あの強さでも威力はかなり落ちていたらしいという事実に、千鶴は頭が着いていっていない。
そんな千鶴に、隣にいた平助が笑いながら話しかける。


「ビビったろ?俺も総司のこのわざ見た時は驚いたし、まして千鶴は魔法にすら慣れてないもんなあ」
「へ、平助君…沖田先輩は、どうして、詠唱も何も無しで…」
「だから言ったじゃん、総司は天才だって。今の、合計で三つの魔法が連携してるんだよ。最初のは、お前も知ってるように初歩の初歩だけど、総司や一君クラスの奴が使うとちゃんと武器になるわけ。で、次のは放出した風を凝縮する術。これを詠唱無しでやった。最後は、それを使役してコンクリに突っ込ませたってわけだ。これも、詠唱無しで+ノーモーションでやったってこと」


平助の説明を聞いても、やはり驚きは消えない。
いや、むしろ驚きが増したくらいだ。
沖田は、強い。身体がそう訴える。


「でも、ホントはもっと威力あるんだよ。今は一君が相殺してたけどなー…。あ、相殺ってのは、同じくらいの威力の術をぶつけて相手の術を打ち消すことな」
「それを、斎藤先輩が…」
「少々威力を見誤ったがな。まさか、屋上であれだけの威力を出すとは思わなかった」


相殺。
それは、相手の術と全く同じ威力の術をぶつけてそれを打ち消すこと。
それはすなわち…


「つまり、斎藤先輩は沖田先輩と同じくらい強いってことですか…?」
「そうなるな。だが、俺は総司と違って、ノーモーションでは使えん」


そう言った後、斎藤は沖田に向き直り、強い口調で言い放った。


「それより、早く壁を直せ総司」
「えー…」
「えーではない。早くしろ」






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