02




「総司なぁ…そうだな、一言で言うなら、天才。かな」


視線を左右に彷徨わせた後、決心したように平助は言う。
その瞳は、先ほど四人がいた屋上に向けられている。


「…天才、って?」
「そのままの意味だよ。総司は魔法の天才。どんな方法使ってんのかは知らねぇけど、あいつはどんな属性の魔法でも使えるんだよ。魔力だって半端ない。呪文の詠唱も無し、おまけにノーモーションで発動できる。そんなこと出来るのは、先生たちの中でも数少ない」


ここに来る前に、魔法については一通り勉強してきた。
人は、基本的に一つの属性の魔法しか操れない。
魔力の強い者で、時々二つの属性を持てるものもいるらしいが、それでも、最大が二つらしい。
けれど、彼は。沖田は、全ての属性を使えるというのだ。
例外中の例外。恵まれすぎた才能。
つまり、天才には必ず、欠陥が存在する。


「まぁ、その代償なのか何なのかもしれねぇけどさ…アイツ、回復系の魔法は一つも使えないんだってさ」
「……え?」
「本当だって、本人に聞いたし。一度も成功したことないらしいぜ。他は、どんな高度な魔法でも簡単に操れるらしけど」
「そっか…」
「後はそうだな…あ、女癖が悪い、かな。しょっちゅう違う女連れてるし」


と、さも何でもないことのように言う。
だが、ある意味千鶴にとっては衝撃的だった。


「え…それ、本当?平助君」
「あーうん、まあ。端から見たらそうだな…」
「端から見たら…?」
「あー…その…」


そう言葉を濁し、視線を彷徨わせた後、決心したように千鶴に向き直る。
そして、小さな声で話し始めた。


「これは、頼むから内緒にしといてくれよ…」
「う、うん。わかった」
「総司の奴…実は、凄い女嫌いなんだ」
「……え?」


意味が、わからない。
そんな表情を浮かべた千鶴に、平助は苦笑いを浮かべる。


「俺もよくわかんねぇんだけどさ、前、本人が女なんて大嫌いだって言ってたのも聞いたし…だったらなんで女遊びしてんだとか、いろんな疑問はあるんだけどさ、教えてくれねぇんだよ。一君はなんか知ってるみたいだけど…」


そう言いながら、平助は姿勢を崩した。
謎が多いんだよ、アイツ。
そう言う平助の表情には、色んなものが混ざっていた。
呆れや寂しさ、そういったものが全部混ぜこぜになっている。
そんな瞳を見て、千鶴は何も言えなかった。



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