01



ざわざわとざわめく教室の端で、千鶴と平助は他愛のない話をしていた。
内容は主に、離れていた間のことや学園のこと、魔法のこと。
そして、先ほどの昼休みに会った先輩達のことだった。


「ねぇねぇ、平助君。平助君はさっき、先輩達にいつも通りに喋ってたけど、普通は先輩相手って敬語使うんじゃないの?」
「あー、それな。実はさ、俺があいつらと友達になったのって、学校でじゃねぇんだ。入学前の春休みにゲーセンで会って、仲良くなったの」
「なるほど…じゃあ、学校で会うまで、同じ学校だってことすら知らなかったってこと?」
「そう。会った時はマジでビビったよ」


平助は、楽しそうに彼らとの思い出を語っていく。
ゲーセンでの出会いのこと。
沖田がかなりゲームが上手いことや、斎藤がやたらカーレースが強いこと。
まるで自分のことのように、誇らしげに語る平助に、千鶴は羨ましそうな視線を向けた。
平助は、自分の知らない彼をたくさん知っている…。
そう考えて、千鶴はふと我に返った。
今、自分は彼、と断定した。
彼ら、ではなく、彼。
その彼が誰かなんて、考えずともわかってしまった。
脳内に、あの日の笑顔が蘇る。
さらさらとした綺麗な茶髪が風に舞った。

沖田総司先輩…。
自分は、彼のことを何も知らない。
それなのに、どうしてこんな感情を抱いてしまうのか。
そんな、答えのない自問自答をしていると、不意に平助が耳元で叫ぶ。


「……ぃ、おい!千鶴!」
「えっ…?」
「大丈夫か?なんか、ボーっとしてたみたいだけど」
「あ、うん。大丈夫だよ、ごめんね」


慌てて平助に謝罪をする。
そして、思い切って尋ねてみた。


「あ、あのさ、平助君」
「ん?」
「……あの、その…お、沖田先輩って…どんな人なの?」
「え…総司?」


それを聞いた瞬間、平助はわずかに顔を歪めた。







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