01


彼、沖田総司と別れた後、千鶴は学園長である近藤におおまかな説明を聞いた。
寮の部屋やクラス分けなど、生活するのに必要なものを始め、気がつけば世間話までしていた。
近藤はおおらかで優しく、その屈託のない笑顔を見ていると、自分の中の不安が少しずつ和らいでいくようで…千鶴は、改めて綱道に感謝した。
こんな優しい人が学園長をしている学園なら、自分でも上手くやっていけるかもしれない。
そう思えたから。


「しかし、まさか総司が君を連れてくるとはなあ…」
「総司…って、さっきの人ですよね?」


しみじみと、近藤が言葉を漏らす。
その名前に聞き覚えのあった千鶴は、不思議そうに聞き返した。
近藤の言葉は、まるで、彼がそうすることがありえない、とでも言うようだった。
けれど、自分をここまで連れてきてくれたのは事実。
確かに、いきなりノートを奪ったり、人をからかったりと、少し意地悪な人だとは思うが…。
そう悩む千鶴を見て、近藤は慌てたように言葉を続けた。


「いやっ、まあなんにせよ、総司には感謝しないとな」
「はい、今度また、改めてお礼を言っておきます」
「それがいいだろう」


そうしてしばらく雑談を続けていると、突然、校長室のドアが慌ただしく開けられた。
扉を蹴破ったのでは、と思える凄まじい轟音に、千鶴は思わず身を固くする。
部屋に飛び込んできた人は、その勢いを殺さぬままに近藤に詰め寄る。


「近藤さん!総司のやつ見なかったか!?」
「おお、トシ。総司なら、しばらく前にここにきたぞ。雪村君を連れてな」
「くそ!一足遅かったか…。……雪村?」


悔しがっている様子を見せていたその人は、今気づいた、というように千鶴の名前を復唱する。
黒いスーツに黒い髪、その奥には深く美しいアメジストの瞳が輝いていた。
くわえた煙草を指で消すと、千鶴の顔をまじまじと見つめる。
沖田と同じく、美しく整ったその顔を近づけられて、千鶴は思わず赤面した。


「あんたか、綱道さんが言ってた女は」
「は、はい…。多分、私のことです」


話は読めないが、綱道、という名前が出てきたならおそらく自分のことだろう。
そう考え、千鶴は視線を逸らしながら肯定した。


「総司がお前を連れてきたって?そりゃ、一体どういう心境の変化だ…」
「まぁまぁ、総司だって、たまには気紛れくらいおこすさ」
「あいつは毎日気紛れで動いてるだろうがよ…」
「えっと…」


話がつかめない。
彼らの話から推測するに、どうやら彼がこういうことをするのはとてつもなく珍しいらしい。
そして、気分屋なのだろう。
黒スーツのお兄さんは、しばらくぶつぶつと何か呟いていたが、突然顔を上げて。


「っと、こんなことしてる場合じゃねぇ!早く総司を見つけねぇと」


そう言って、また新しい煙草に火をつける。
そして、千鶴の方に向き直って、ふっと優しい表情を向けた。
思わず、心臓が跳ね上がる。


「雪村千鶴、だったな。俺は土方歳三。お前のクラスの担任で、一年の援護系魔法の教師だ。よろしくな」
「あ、はい!よろしくおねがいします!!」


おう。
そう小さく呟いて、土方先生はやっぱり慌ただしく去っていった。


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