風紀委員の挨拶中に大乱闘

はぁ…疲れた。
始まって20分で疲れた。
何だよこれ、いや、もう日常茶飯事だけどさ。
リボーンの横暴なんて。
もう嫌だ…さっき騒ぎを起こしたからか、皆の視線が痛い。
主に、壇上の風紀委員からの視線が痛い。
つか、最早視線じゃねぇよ、殺気だよ。
あぁ…早く終わらないかな…。

「……で、あるから、校則違反者には随時失点が課される。詳しくは生徒手帳を参考にしてくれ。LevelAが失点5、LevelBが失点3、LevelCが失点2だ。ちなみに、遅刻は失点2に当たる」

あの風紀委員さん…えっと、確か副委員長の斎藤先輩。
彼はとんでもない美形だった。
少し癖のある紫がかった黒髪に透き通るように白い肌。
雲雀さんと同じくらい白くて細い。
(あの暴君委員長も、見た目だけはゾッとする程美しい。反則だろ、あれは)
それに、あの透き通った藍色の瞳はドキリとするほど美しい。
女子生徒のほとんどが、彼に見惚れていた。
それに、話は凄くわかりやすい。
わかりやすい…んだけど、頼むからその殺気を収めて下さい。
新入生(主に男子)が超ビビってます。
内心冷や汗ダラダラな俺だが、唯一の救いは、その殺気が俺宛てでないこと。
何故か体育館の入り口、その扉のもとに注がれている。
何なんだろう、と向こうを見ようとしたその瞬間。

「………そうだな?総司、葵」

ドスの聞いた低い声が、マイク越しに響き渡った。
思わずひぃ、と情けない声を上げてしまう。
だが、そんな俺の内心とは正反対な、ずいぶんと呑気な声が聞こえた。

「やだなぁ、一君。名指ししなくてもいいんじゃない?」
「そうそう、いつものことだよ」

第一印象は、何て綺麗な人達なんだろう。そう思った。
心底愉快そうに細められた翡翠色の瞳に、猫っ毛の茶髪。
身長はかなり高くて、俺なんかじゃ簡単に見下ろされるだろう。
もう一人は、濡れた漆黒の髪に隣の人と同じ翡翠の瞳。
女の人だけど、一瞬男かと思ってしまう程中性的だった。
二人とも、思わずゾクリとする程顔立ちが整っていた。
挑戦的に上げられた口元に無意識に惹き付けられる。
……なんだか、美形ばっかりだ。
自分が悲しくなってくる。

「あんたらは入学式まで遅刻するのか?もっと先輩としての自覚を持て」
「一君は固いなぁ…」
「仕方ないじゃん、総司が…」
「一応聞いておこう。何故遅刻した」

怖い。
情けないことに、心底怖い。
美人が怒ると怖いって本当だったんだなぁ、なんて納得してしまった。
だが、そんな俺の恐怖なんか微塵も感じていないのか、美形な先輩二人は至極楽しそうに笑っている。

「だってさ、総司が放課後ケーキバイキング行こうデートしようってうるさいんだよ」
「えーいいじゃない行こうよ」
「嫌だ、だって私甘いモノ嫌いだし」
「葵ちゃんってつくづく女の子らしくないよね、普通女の子は甘いモノ好きでしょ」
「女の子らしくなくて悪かったね、だったら私と別れて可愛らしい女の子何人も捕まえてきなさいよ!」
「え?嘘ごめん!葵ちゃんは十分可愛いし女の子らしいから!」
「この浮気男…酷いわ!私の心を弄んでたのね!」
「ごめん葵ちゃん愛してる!浮気なんかしてないから!だから別れるなんて言わないで!」
「あんなに愛し合ったのに…!もういいわ、実家に下がらせて頂きます!」
「ごめんんんん!!帰らないで下がらないで葵ちゃんいなくなったら僕死んじゃうから生きてけないから!」

唖然。
この一言につきるだろう。
なんだこのコントみたいな会話は。
どっからこうなった、甘いモノの好き嫌いの会話じゃなかったのか。
明らかに演技だろうとわかる女の先輩を必死になだめすかす男の先輩。
女の先輩の方が強いんだな…。
遠い目をしながら納得していると、不意に壇上の方から不穏な空気が流れてきた。

「沖田…」

地の底から響くようなおどろおどろしい声。
その声に肩をびくつかせながらも壇上の方へ振り向くと、またもやイケメンさんがいた。
…この学園、おかしくね?
なんでこんな美形の出没率半端ないんだよ。

「俺の姉さんから離れろよ!」
「嫌だよ、というか、なんで君がいるのさ」
「そんなの、一足先に風紀委員に入ったからに決まってるだろ。とにかく、今すぐ姉さんから離れろ!」
「だから、嫌だって言ってるでしょ。このヤンデレシスコン変態女装男」
「っ〜…お前に言われたくないね!ド変態鬼畜サドマゾ野郎!」
「失礼だよね、僕がマゾになるのは葵相手の時だけだし!」
「っそれが変態だって言ってるんだよ!」

…お二方、素敵なカミングアウトをありがとうごさいます。
素晴らしい性癖をお持ちで…。
というか、全校生徒集まってるってこと忘れてませんか?
残念なイケメンさん達の喧嘩は徐々にヒートアップしていき、遂に竹刀まで出てきてしまった。

「本当、ムカつくよね君。前は僕を兄と認めたくせに」
「うるさい、昔と今は違う!やっぱりお前に姉さんは渡せないよ!」
「口で言ってもわからないなら…身体に教えてあげるよ!」
「なめないでくれる?今のお前なんか怖くないよ!」

手に持った竹刀を構え、二人が衝突する!
……誰もがそう思った、その時。






「……ってめえらいい加減にしろぉ!!」

鬼のような形相をした教頭先生の雷により、勝負は終了してしまったのでした。
あれ?作文??




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