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「ご指名ありがとうございます、総司です」

キラキラ輝くライトの下、それに負けないくらいの笑顔を浮かべて、沖田は目の前の女の子に微笑んだ。
歳は、二十歳くらいだろう。
少し傷みかけの茶髪を綺麗に巻いて、緊張したように派手なソファーに座っていた。

(なんだ…簡単にいきそう、お得意様っていうから、どんな子かと思ったのに)

そう思いながら、彼女の隣に座っていた斎藤に視線を送る。
その視線を受けとめて、斎藤は僅かに視線を逸らした。
沖田もつられて視線を動かす。
もちろん、彼女には気付かれないように。
長年の付き合いでお互いの意図することがわかってきている彼らは、店ではアイコンタクトが多いのだ。
斎藤の視線の先…そこには、沖田や原田でさえも悩まされる存在がいた。
げっ、と口に出さずに呟く。
一応、支払いとサービスのいいお嬢様である。
しかし……臭いのだ、香水が。
どうしてそこまで付けるというくらい、最早瓶一本ぶっかけてんじゃないのかお前なほどに臭う。
正直、近づきたくない。
しかも、(正直あまり可愛くない顔で)ベタベタと甘えてくる。
そこをプロ根性で、笑顔で乗り切った沖田と表情を変えなかった斎藤は残念なことに気に入られてしまったのだ。

どうやら、彼女はあのお嬢様の推薦らしい。
友人か何かだろう。
あぁ…どうしてこっちに似てくれなかったんだよあのお嬢様たのむから僕に気付かないでねファ○リーズぶっかけるよだのなんだのと内心で毒を吐きながら、沖田は目の前の女の子に向き直る。

「今夜は…僕のお姫様になってくれてありがとう。たっぷりと酔わせてあげるよ、帰れなくなるくらいにね?」
人差し指を唇に当て、片目を瞑って、そして、とびきり甘い声で囁いた。

蜘蛛が蝶を捕えるように。
甘く甘く、浸食するように。
決して、抜け出せないように。
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