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艶やかなネオンが照らし出す夜の世界。
咽返るような色香を隠そうともせず、周囲からの視線を受け流して、二人は早足で人ごみの中を歩いていた。
僅かに息を乱す赤い髪の青年――原田左之助と、同じように隣を早足で歩く茶髪の青年、沖田総司だった。
その端整な顔つきに、乱れた息遣いがやたらと色っぽく、僅かに漂う香水の香りも彼らの魅力を手伝っているので、すれ違う人のほとんどが振り向いていく。
が、二人ともそんなものには慣れっこな上、今は急いでいるので、全く意にも介さない。

原田左之助と沖田総司といえば、少しでもクラブ遊びをした者ならば、知らない者はいないだろうと思われるほどの有名店、ホストクラブ『誠-MAKOTO-』の現1と2である。ちなみに、その売り上げ差は常に拮抗している。
そんな、ライバルでありある意味敵とも言えるであろう二人がなぜこんな時間に焦って歩いているのか、それは至極簡単な理由である。
…いや、簡単というには少々ありえない理由だが。
昨夜、いや、正確には昼間だが、とにかく共に一夜を過ごした二人が揃って寝過ごした。それだけである。
男同士だろお前らとか、ライバルじゃないのかとかは突っ込んではいけない。
彼らにとっては、こんなのは日常茶飯時なのだ。

「ああもう…!なんで今日に限って携帯の電源切っちゃったんだろ!」
「二人揃って寝坊とは…こりゃ土方さんから大目玉喰らうな」
「しかも、今日ってお得意さんが来る日じゃなかったっけ?もう!なんで起こしてくれなかったのさっ、左之さんの馬鹿!」
「無茶言うなって、俺だって寝過ごしたんだからよ」

理不尽な沖田の言葉に、特に気にした風もなく返答する原田。
沖田が我侭なのはいつものことなので、この程度で怒っていては身が持たないのである。
むしろ寛大に我侭を聞いてやらねば、彼はすぐに他の人のもとに行ってしまうだろう。
そのことを熟知していて、なおかつ沖田のことを気に入っている原田としては、甘やかすしか道はないのである。
不満そうにする沖田の頭を撫でて宥めてやると、まだ不機嫌ではあるものの、幾分かその空気は和らいだ。

「……今度、何か埋め合わせしてよね」
「わーってるよ、だから今は急げって」

道中かけられる声も、普段なら受けるであろうお誘いも全て無視して、二人はオーナーである土方の雷を覚悟しながらクラブへと急いだのだった。
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