「ひっじかたさーん♪」
やけにご機嫌な様子で職員室にやってきた沖田。
そんな彼のお目当ての人物は、若干疲れたような目をしながらも侵入者を迎えた。
「ああ?どうした、総司」
「聞いて下さい土方先生!僕また告白されちゃいました」
「………またか、」
「またです。今日は一個下の学年で可愛いって評判の女の子です」
「で?また振ってきたのか」
「まだ振ってません、保留です」
「は…?」
沖田の返答に、一瞬驚く土方。
無理もない、今まで彼は誰に告白されようとも変わらずに断っていたのだから。
それが、今日は保留にしてきたという。
「なんだ、その女に気でもあるのか」
「まさかー。そんなわけないですよ、話したこともないのに」
「だったらなんでだ」
「……もう、土方先生ってわかってないですね」
そう言うと、いつの間にか隣に戻ってきていた原田の膝の上に座り、甘い笑みを浮かべながら呟いた。
「土方先生…?最近構ってくれませんよね、仕事が忙しいのは知ってますけど…でも、そんなの理由にならないです」
原田の大きな手が沖田の柔らかな琥珀の髪を撫でていく。
それに、猫のように心地よさそうにしながら擦り寄った。
「……つまり、お姫様はご機嫌斜めってわけか」
原田が苦笑しながら言う。
「そういうことです。僕ね、ほっとかれるの嫌いですから」
愛するよりも愛されたい。
甘やかすよりも甘やかされたい。
大きな猫のような気紛れな彼は、言外にそう言って拗ねたようにそっぽ向いた。
「ったく、悪かったよ…だから、さっさと告白は断ってこい」
「……先生、嫉妬しました?」
結局、折れたのは土方で。
ため息を吐きながら、そう言って宥めるように頭を撫でてやるとニヤリと笑ってそう返される。
「……適わねぇよ、てめぇには」
そんな表情すらも可愛くみえてしまう自分は、どれだけ沖田に溺れているのだろうと苦笑しつつ、肯定の代わりにそう言った。