「お前は、何の為に刀を振るう」 これは、まだ私が幼く弱い、ほんの子供だった頃。 師として尊敬したあの人に言われた言葉だ。 「自分のため…己が強さの為ですよ」 私はそれに、寸分の迷いもなく即答する。 私は私の為に。 己が強さと存在の為に。 その為だけに、私は刀を握るのだ。 その為だけに、私は刃を振るうのだ。 その答えに、彼は哀しげに瞳を揺らす。 「そうか…」 「師匠…何故そんな瞳をするんですか。私の想いは、貴方が一番よく知っているはずだ」 私が、私が力を求める理由は… あれ? 何で、思い出せない、 何で…貴方の顔さえも見えないんですか、 何で…私は貴方を思い出せないんですか? 確かに「師」と呼ぶ貴方すらも、 今の私には遠い存在に思えた。 「葵、忘れるでない。例え今はわからずとも、いつかきっと…理解するだろう」 「頼むから、お前の刃で、己の心さえも傷つけないでくれ。頼むから…そんな傷だらけの心を、隠さないでくれ」 「いつか…本当に大切な者のために、剣を振るいなさい」 その言葉を最後に、私は夢から覚醒した。 終わりの始まり (あ、葵ちゃん起きた?) (総司…、) (実はね、面白いことが起こったんだよ) (……?) その日から全てが始まった… |