雲雀+クローム
(見ようによっては雲髑注意)



見回りの最中に見つけた某果実のような頭に思い切りトンファーを振りかざそうとしたところで、雲雀は人違いに気付いた。
目の前でびくびくしている相手は、確かにパイナップル頭だが、彼の求める標的ではない。というか、そもそも性別が違っていた。
名前なんて覚えていない。六道骸の付属物、という認識でしかなかった彼女が、どうしてわざわざ並盛という土地にまで来たのかは定かではないが、別に群れてはいないし、自分の機嫌を損ねたわけではないので、とりあえず構えていたトンファーを降ろして口を開く。

「…並盛に何の用?」

その問いかけに、またびくりと肩を震わせて俯くクローム。片方しかない瞳は所在なさげに宙を彷徨って、なにか言葉を探しているらしかった。
普段は、何もなければさっさといなくなってしまうことを思い出し、この様子から、何か用があるのだろうと判断した雲雀は、とりあえず彼女の言葉を待っていた。
自分の言葉を待つ雲雀に、ようやく決心がついたのか、クロームは、その形のよい唇を開いて僅かな声で空気を震わせた。

「あ、あの…これ…」

言いながら、手にしていた白いビニール袋を差し出す。
受け取れ、と暗に明示しているのだと気付いた雲雀は、無言でその袋を受け取った。
とりあえず、中身を調べてみる。

「……は?」

中から出てきたのは、なぜか鳥の餌であった。
スーパーで売っている、ごく普通の餌である。
頭の回転がずば抜けて速い聡明な雲雀でも、さすがにクロームの意図が掴めず、首を傾げて問いかけた。

「なに、これ」
「……餌」
「見たらわかるよ。どうして、これを僕に渡すの?」

煮え切らない答えに段々とイラついてくる。鳥の餌。それと自分がどうしても結びつかないのだ。そもそも、六道骸の付属物が、どうしてわざわざ自分に会いにくる。
目に見えて不機嫌になっていく雲雀に、クロームが慌てたように言い添えた。

「あ、の…その、小鳥」
「…これのこと?」
「そう。…触らせて、欲しいの、少しでいいから」

学ランのポケットから顔を出す小鳥、通称ヒバード。それを指差してそう言うクロームに、雲雀はきょとんとした表情を浮かべた。
二人の間に、微妙な沈黙が落ちる。
少しして、雲雀がおもむろに口を開いた。

「…なんで、鳥の餌?」
「……、手ぶらじゃ、悪いと思ったから…」

ずいぶんと律儀な子だ。雲雀の中で、クロームの印象が、六道骸の付属物から、律儀な眼帯の女に変わった瞬間だった。
頼み事のための手土産らしいが、それにしても鳥の餌って…。
そう内心で、彼にしては珍しく、穏やかに笑ったあと、さきほど受け取った鳥の餌を再びクロームに返す。
もしかして、断られた?と、目に見えてしゅんとする彼女に、続けてヒバードも放り投げた。

「え…?」
「僕は今から、昼の見回りがあるんだ」

ちょうどいいから、君、それに餌やっといて。
それだけ言って、さっさと雲雀は歩いていってしまう。
残されたクロームは、渡された餌とヒバードを交互に見比べた後、雲雀の不器用な了承の言葉に嬉しそうな笑みを浮かべて、餌の袋を開けた。






こんな感じで微妙な仲になればいいと思う。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -