自分の誕生日を祝うなどという名目で馬鹿騒ぎをする面々に内心で溜息をつく。
そもそも、雲龍は孤児だったのだから正確な誕生日もわからないはずだ。
それを言えば「よし、なら今日が誕生日な」とレヴィに一方的に決め付けられてしまい、そのままイエローフラッグに連れ込まれてしまった。
それなりに名の知られている自分であるから、その騒ぎはたまたま居合わせていた客をも巻き込んで広がっていってしまい、もう半狂乱である。

そこらで飲み比べは始まっているし、さっそく喧嘩も始まって銃声まで聞こえてきた。
溜息をついて頭を抱え、目の前に出されていたテキーラを一気に煽る。
喉が焼けるように熱かったが、気にはならなかった。



「よーォ色男、飲んでるかィ?」
「……エダ、」


隣に金髪の美女が腰掛けた。
通称暴力教会に名を連ねるシスターであり、雲龍とは知った仲でもある。
エダが身体を寄せると、その動きに従って金髪が雲龍の顔にかかった。
それを流れるような動作で横に払い、彼女に飲んでいたテキーラを突き出す。


「つれないじゃないのさ、ご機嫌斜めかい?」
「いつもだろ。それに、いきなり今日を誕生日にされてドンチャン騒ぎを起こされたら、呆れもするさ」
「レヴィなりに気を使ったんじゃないの?たまには、気遣いもするってことだね」
「全く…騒ぎたいだけだろ」


言いながらも、雲龍はここから出て行こうとはしない。
騒がしいのは嫌う性質でありながらも、大人しくカウンターで飲んでいる。
それに気付いたエダが、くっと笑みを零した。



銃声と怒号の響く街、ロアナプラ。
悪党という悪党が跋扈し、悪徳という悪徳が蔓延る。
アルコールとドラッグが辺りを埋め尽くし、死体と硝煙がそこらに漂う。

この世の果てのようなその街で、雲龍は生まれた。
そして、今、ここで生きている。


「オーライ、色男、景気付けに、あたしと一発しけこもうや」
「ファックがプレゼントだって?それこそ、何ともまぁファック(くそったれ)な提案だね。喜んで遠慮するよ」




今ある生に、乾杯。



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