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ただいま! 懐かしい君のもとへ、帰ってきたよ!
(空気が、変わった。) 並中の屋上で、雲雀はそう感じた。 言葉で説明出来るものでは、決してない。 しかし、確かに変わったのだ。 敢えて言うならば、空気が冷たくなった、だろう。 だが、それと同時に、どこか懐かしい香りも漂っている。 「恭兄さん?どうしたの?」 隣に座るツナが不思議そうに声をかける。 「綱吉……」
この学校の秩序であるヒバリこと雲雀恭弥と、ダメツナこと沢田綱吉は、俗に言う幼なじみという関係であった。 だが、これを知る者は、現在この学校にいない。 自分に恨みを持つであろう者達が、非力な綱吉を利用しよう等という考えを持たぬように、雲雀が関係をひた隠しにしていたのだった。 だが、今はそれが仇となってしまっているのだが。 「何でもないよ。…そろそろ予鈴が鳴るね」 「あ、ホントだ!!じゃあまた放課後ね、恭弥兄っ!」
そう言って、綱吉は慌ただしく屋上の扉を開けて階段を駆け降りていった。 ああ、そんなに走ったら…と思ったが、もう遅い。 派手に階段から落ちた音がした。 「はぁ…相変わらずドジだね、綱吉は」 「「本当にな」」 「全く、心配するこっちの身にもなりなよ……………って、えっ?」
雲雀の言葉に相づちを打ったのは、もちろん綱吉ではない。 とすると…
(まさか。)
雲雀の胸に、一つの可能性が灯る。 ありえない。 打ち消しても打ち消しても、どくどくと脈打つ心臓は気持ちと比例するように高鳴って。
「ラミア、…アストー……?」
やっとのことで絞りだした名前は、幼い頃の友人の名前。 ああ、懐かしい彼らが…
「ご名答♪」 「ただいま、恭弥」
帰ってきた。
ただいま、おかえり。 (懐かしい黒と赤が眩しくて) (僕は瞬きすら忘れて見つめてた)
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