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『アノ、‥失礼しますスネイプ先生、ご機嫌いかがです?』
『‥全く心を痛めている、学年末のOWLでここまでの点数を取ったのは十年内でも――一人だけだ、ミスみょうじ』
『やっぱり』
『マクゴナガル女史から話は聞いている、‥なに、みょうじ、再来年に魔法省直下の天文台に就職が決まったと』
『ああ、はい、――でもお断りします』
『‥何故?』
『ゆっくり過ごしたいのです、せかせかした所はねえ。それにわたし    ‥なんです、秘密ですよう。魔法省はわたしみたいなやつは厭ですね、閉鎖的な場所ですから、先生も、お嫌いでしょう」
『!‥、――だが課題と補修は断れませんぞ』
『まさか、課題はわたしからも是非お願いしたことなんですから、宜しくお願いします』










「――鼠の脾臓は一つ、ヒルの汁はほんの少し入れればよい」


スネイプ先生の声ではっとした。昔の、在学中のことを考えると頭が真っ白になってしまうのは悪い所だ。机にマスターしたばかりの浮遊呪文で器具を置き、雛菊の根と萎び無花果を配り歩いた。
そうだ、ぼけっとしていられない。今日はスネイプ先生の授業の助手という恐ろしい――いや、名誉な役なのだから。一応質問された時に答えられるように、縮み薬のページと材料だけはしっかり暗記しておいた。1日だけなら記憶も持つから、大丈夫なはず。
この教室の中でも、わたしはやはり少し浮いていた。たまにちらちらと生徒がわたしの方に物珍しげに視線を向けているのがわかった。スネイプ先生が板書を終えると、実習が始まった。


「あの、みょうじ先生?」

「アーはいはい」


早速一人の生徒がわたしの服を引っ張ってくる。丸めがねで、少し幼く見える、エメラルドの瞳がこちらに向いていた。


「イモムシは輪切りですか?」

「そうそう。無花果は皮を剥くんだよ、――あーも少し小さく‥」



ナイフをもつ器用な手が小刻みになった。何だか昔のわたしを見ているみたいで、少し親近感が湧く。まあ、確実にわたしよりは上手いけれど。
安心してふと横を見ると、見過ごしならない様子だったので思わず口を出してしまった。


「君!スリザリンの金髪、駄目だよ雛菊を人にやらせたら。手をケガしてるなら、わたしに」

「それには及ばん、みょうじ先生。」


スネイプ先生が後ろから突然現れ、わたしの手を掴んだ。この顔は、そうそう。わたしの時にもあったっけ、スリザリン贔屓にグリフィンドール嫌い。
‥まだ健在だったとは。よし。やるしかない。



「彼は教師の不注意でバックビークに怪我を負わされたのでしょう、従って、手伝いを『生徒』にやらせるのは不適切です」

言って見たかったんだよね!スネイプ先生に文句!


「みょうじ先生、」


眼鏡の彼と赤毛君がわたしをじっと見つめた。


「ポッター達に指示したのは我輩だ、‥みょうじ、助手の君に授業の進行に異議は認めん」

「ならその進行に滞りが生じる余地があるので、たかが助手が、金髪君の補佐をしますよう。筋が通ってますよね、わたし」

「‥‥‥」



周りの、特にグリフィンドールの生徒が不安そうにわたしとスネイプ先生を伺っている。減点を言い渡されることを予想しているのだろう。かくいう私も実は凄く怖いんですよ、平気なわけないでしょう、学生の時散々怒られたのだから。減点や罰則を与えられる立場ではないから、言えたのだ。



「‥ならば任せよう、みょうじ臨時教授」


‥スネイプ先生から発せられた言葉は、とても予想外だった。


「分かりました」

「付け焼き刃だが‥勉強の成果を見せて貰いたいものですな、在学中の君を考えると夢のようだ」

「ウワア、また言いますか」


スネイプ先生が違うテーブルに行くのを見送ってから、金髪君の材料を細かく切る作業に取りかかった。彼の顔は思い通りにならなかったせいか、些か不満そうだ。
‥違う意味で、いい大人になりそう。どうやら切り抜けたと、思っていたのもつかの間。




「諸君、ここに集まりたまえ」


‥先生の横には恐怖で引きつった体格のいい男の子がひきがえるを見つめていた。
本当に変わらないよ、スネイプ先生の意地の悪さは!

20110311