久しぶりのホグワーツは、魔法界は私を驚かせるばかりだ。天候が映る天井、階段。なにもかもが懐かしい。時刻が時刻なので不気味な位静かで、僅かな灯りが逆にゆらゆらと揺れて気味が悪い。昔からこんな感じだっただろうか。
「部屋はここを曲がった‥防衛術教室の斜め前になる」
「わ、まっ暗」
「明日の朝食の席でお前の紹介がある、それから」
「それから?」
スネイプ先生が徐に此方を向いた。
「壊れた物を直す呪文は」
「え‥?」
「‥先が思いやられる」
「あっルーモス!」
「‥グリフィンドール十点減点、明日までに調べて来い」
「もうわたし生徒じゃありませんよう――て、あれ?いない」
さっさと踵を返し闇に消えてしまったスネイプ先生を見送ってから、杖で明かりを灯した。ああルーモスて明かり点ける呪文だったと、今更気が付いた。
こつ、こつ、
靴が石畳を踏むこの足音が、好きだったっけ。
懐かしさでつい自室と指示された方へ向かう途中、目の前の防衛術教室を覗くと、昔と変わらない木目机が私を迎え入れる。中まで入ると、何だか前よりも柔らかな雰囲気に包まれているような気がした。今の防衛術の先生は誰なのだろう、お爺さんか、まさかのおばさんか。普段陣取っていた一番後ろの席に座って、教室を見渡す。
「誰だ?」
若い男の人の声がした。驚いて前を見ると、階段から人影が現れる。
「アー、すみません、生徒じゃなくって臨時教授なんです」
「ああ!セブルスが言ってたよ、初めまして」
「わたし、なまえ・みょうじです」
「私はリーマス・J・ルーピン。防衛術を担当しているんだ。‥なまえ。今日は遅いからまたゆっくり話そう」
近づいてくる光で辛うじて見えたリーマス先生の顔はわたしが思うよりもずっと年上の人で、少しやつれている。けれどスネイプ先生より物腰はずっと柔らかで、この教室の良い雰囲気は彼のものなんだと納得出来た。
「おやすみなさい、リーマス先生」
「此処は寒いからね、暖かくして寝るんだよ」
初めてこんな事言われた!‥リーマス先生てきっと凄くいい人なんだろうな。
先生の言葉に機嫌よく指示された部屋に着くと、古びた扉にわたしの名前のプレートが掛けられている一角を見つけた。どうやら鍵が掛かっているらしい。
‥‥え、鍵?
「‥教科書、教科書‥あった!アロホモラ!」
スネイプ先生、早速基本呪文集が訳にたちました。
20110311