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外に出ると昨日の夜からまだ続いているのか、一面が雪景色に変わっていた。しんしんと降る雪は地面に積もり、生徒たちによって踏みならされたところもあってか、泥が混じっている。遠目に今は動いていない噴水のそばで、マフラーを巻いたリーマス先生がぽつんと立っているのを見た。



「遅くなりまして」

「いいや、私も今来たばかりだよ」



敷地内では姿現しが出来ないため、外まで出ると、リーマス先生が片腕を差し出してくれた。…確かに、未熟なわたしがこんなに高度な魔法を使ったら体がばらばらになってしまう事請け合いだ。有り難くそこを掴むと、慣れない浮遊感のあとに賑やかな界隈が視界目一杯に広がった。
早速、ローブを買うために、マダム・マルキンの洋装店へ向かう。



「君は何色が好き?」

「黒か赤ですかね」

「ならその色中心にして貰おうか」





久しぶりの人込みは何だか、別世界のようだ。賑やかな人の声、雑踏、時報を告げる鐘の音。それすら前の生活で忘れてきてしまったようで、なんだか自分が本当にここにいていいのか、と疑いたくなる。私の歩幅に合わせてくれるリーマス先生は、さりげなく人込みに揉まれないように私をリードしてくれるし、うん、彼は結婚したらいい旦那さんになることだろう。あの蝙蝠のような教授とは違って。



「君、こないだ私にあの薬を見せたろう?」



リーマス先生が突然、話題をふってきたので、一瞬戸惑ってしまった。


「ア、…はい」

「あの薬を作ったのは、女性で…凄く腕のいい人に違いないだろうね」

「…よく、ご存知で」

「その人を知ってるからさ」



君がどうしてそれを持っているか聞かないけれど、と付け足したきり、道中言葉を交わすことはなかった。
買い物を終えて、手には新しいローブ、おまけにリーマス先生が買ってくれた新発売のキャンディーが握られている。そして…まるで父親かなにかのような表情をして先生はわたしを見る。それはとても心地よいが、しかしスネイプ先生は違う。スネイプ先生の眼は、わたしを惹きつけて離さない。保護者のようで野心家のようで、こうしてわたしは忘れられずにいた。今の今まで、卒業してからも、ずっと。彼は本当に不思議だ。



「リーマス先生」


「何?」


「ありがとうございました、一緒に選んでくれて」



「いいよ、私こそ手伝って貰ったから」




そう悪戯ぽく買い物袋を見せたリーマス先生に、今日は影を見ることはなかった。

20110502