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初めての授業が終わった後、疲れきって眠ってしまったため、朝起きるときりきりと空腹で腹が痛かった。そういえば、夕食を食べるのも着替えも億劫でなにもかもが昨日のままだ。窓を見るとまだ早いらしい。空が白んでいる。
部屋の備え付けのシャワーを浴びて、タオルで髪を拭きながら出しっぱなしの教科書をしまおうと手を出すと、見たこともないメッセージカードと健康食品が置かれていることに気が付いた。薄緑のそれをつまみ上げると、なにも書かれていない。何か魔法でもかかっているのだろうか、取り敢えず覚えたばかりの呪文を唱えた。



「アパレシウム」



杖で紙を一叩きするとじんわりと黒いインクが浮き出てくる。






[食事位取れ。S.S]






顔に似合わず心配性な上、生徒を気遣う性質なのに、変なところに勉強をこねまぜてくるのは頂けない。案外誤解されやすい先生に少しだけ同情した。
それにも、私自身気が付いたのも七年になってからだけれど。封を開けてかじると、控えめなチョコレート味だった。




珍しく午前中に三年生の授業を受け持ったが、今日はとても賑やかだ。きっとホグズミードのことで頭がいっぱいなのだ。私のころもそうだった。五年生になればもう飽きてしまうものなのだけれど、初めての週末外出が許されるのはやはり嬉しいのだろう。
気持ちは解るので注意はせずに授業を終えると、宿題を回収した。
誰もいない教室で室内プラネタリウムを畳んでいると、入り口から物音がしたので、教卓横のキャビネットに全てをしまい込んでからそちらに顔を向ける。すると顔色の悪いリーマス先生がいつのまにか私のすぐ側の椅子に腰を下ろしていた。




「プラネタリウム使います?」


「いや、君の姿が見えたから寄ったんだ。それに用事もあったし」


「用事?」


「いや、明日ダイアゴンに行くんだけど‥なまえ、良かったら付き合ってくれないかと思ってね」



用事があればいいんだ、と付け足される。
そういえばローブも買いに行かないといけないし、新しい本も出ていたし、‥用事もない。





「ア‥、私も丁度用がありますから」


「なら明日、午前九時に正門で」



「わかりました」




心なしか顔に赤みのさしたリーマス先生を見送ると、前職を兼ねても久しぶりなプライベートの外出が決まったからか、少し明日が楽しみだった。


20110327