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最近仕事に失敗した部下をこってりと絞り上げたらその部下がいきなり有給をとりやがりまして、‥なんですか、最近の新卒は何かあるとすぐ実家に帰りたがるんですか。‥と、思っていたのですが。1日取っていたはずの有給を繰り上げて半日で出勤してきたかと思えば、何やらえらく上機嫌だ。


「随分とご機嫌ですねえ」
「ああ‥まあ!」


振り向かずに書類整理をする下っ端。どうやらまだ私だと気が付いていない。


「この間の舞妓さんに会いに行ったんだよ!」
「‥‥舞妓?」
「俺が誘拐し損ねた人でさ‥簪残してったモモセさんって、い、‥‥」




「‥続きをどうぞ?」
「‥‥」
「舞妓に会いに行ったんですか?‥捕まらなくて良かったですねえ」
「なっ、モモセさんはそんな人じゃありません!」


‥開いた口が塞がらないとはまさにこのことを言う。まるでキャバ嬢の営業メールにすっかり騙されているやつと同じような台詞を言ってのけたからだ。
そのモモセというのはジムリーダーの妹だ、正義感が強くないわけがないだろう。ああ、そうか、彼女はおまえを信頼させておいて情報を喋らせようとする気なんですかね。早口でそうまくし立てると、下っ端の顔がどんどん曇ってゆく。けれど何も言えまい。彼らは私に逆らう真似はしない。


「それとも何です、彼女を好きだとでも?」
「‥‥っ!」


‥なんてことだ。 まさか、図星か。


「あっ‥アポロ様に何が‥!!」
「おまえこそ出会って間もない女の何を?」
「‥‥」



ああ、少しいじめすぎましたか。最近なかなか有能な部下が少ないからでしょうかね、私らしくもなく苛々していたのです。勿論部下の力を生かしきる自信もちからもあるつもりだが、肝心の部下がこのレベルでは、使えるものも使えないと、言いたい。たとえポケモンに力があっても、肝心のトレーナーに力が無ければ、それはやはり宝の持ち腐れだ。




「仕事に戻っていいですよ」
「‥はい」




‥モモセ、か。

昨日読んでいた雑誌の特集に、同じ名前を見たことを思い出す。部屋に戻ったら、真っ先に読み飛ばしたそのページを見てみようか。

20110515